Archive for 01 April 2006

01 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 136


 The hateful telling broke out again.
 "Slightly is coughing on the table."
 "The twins began with cheese-cakes."
 "Curly is taking both butter and honey."
 "Nibs is speaking with his mouth full."
 "I complain of the twins."
 "I complain of Curly."
 "I complain of Nibs."
 "Oh dear, oh dear," cried Wendy, "I'm sure I sometimes think that spinsters are to be envied."
 She told them to clear away, and sat down to her work-basket, a heavy load of stockings and every knee with a hole in it as usual.
 "Wendy," remonstrated Michael, "I'm too big for a cradle."
 "I must have somebody in a cradle," she said almost tartly, "and you are the littlest. A cradle is such a nice homely thing to have about a house."
 While she sewed they played around her; such a group of happy faces and dancing limbs lit up by that romantic fire. It had become a very familiar scene, this, in the home under the ground, but we are looking on it for the last time.
 There was a step above, and Wendy, you may be sure, was the first to recognize it.
 "Children, I hear your father's step. He likes you to meet him at the door."
 Above, the redskins crouched before Peter.
 "Watch well, braves. I have spoken."
 And then, as so often before, the gay children dragged him from his tree. As so often before, but never again.

悪意に満ちた告げ口の言い合いが、再び始まりました。
「スライトリーが、テーブルの上で咳をしてるよ。」
「双子が、チーズケーキを先に食べ始めたよ。」
「カーリーは、バターとはちみつの両方つけてるよ。」
「ニブズは、口に食べ物が入ったまま喋ってるよ。」
「双子はね。」
「カーリーはね。」
「ニブズはね。」
「全く、何とまあ、」ウェンディは叫びました。「本当に、時には未婚の女達がうらやましくなるというものだわ。」
ウェンディは、子供達にお皿を片づけるように言いつけて、繕い物に取り掛かりました。いつものように、膝のところに穴を開けた靴下が山のようにあります。
「ウェンディ、」マイケルが文句を言いました。「僕は揺り籠の中に入るには大きすぎるよ。」
「誰かが揺り籠に入ってなきゃ、いけないの。」ウェンディはいつになくきつい口調で言いました。「あなたがみんなの中で一番小さいでしょう。家には揺り籠ってものがないと、しっくりこないのよ。」
縫い物をしていると、子供達はウェンディの周りで遊ぶのでした。素敵な暖炉の火に照らされて、なんとも幸せそうな子供達の顔と、活発に動き回る手足がありました。こんな情景はこの地下の隠れ家では、もうとても見慣れたものになっていました。でもこれも、今日で最後なのです。
 上で足音が聞こえました。そして勿論、ウェンディが最初にこの足音を聞きつけました。
「子供達、お父さんの足音が聞こえたよ。入り口のところでお出迎えしなさい。」
地上では、インディアン達がピーターの膝元でかがみ込んでいました。
「よく見張ってくれ。勇者達よ。ピーター・パンの言葉じゃ。」
そしてそれから、これまで何度もやったように、喜びに満ちた子供達はピーターを木から引っ張り出したのでした。これまでも何度もそうして来ました。でも、もうこれっきりなのです。

このお話の特徴として、読者がお話しの将来を既に知っていることを前提に語りの作業が進められる点があげられる。常に未来の展望を含めたものとしての現在がある。未知の遠い将来が存在しない代わりに、既に了承済みの既定の未来が予測されているのである。

用語メモ
 “you may be sure”:“多分思ってらした通り”とも訳せるが、“勿論”と訳しても同様である。このお話では作者の口癖のように、“of course”(勿論)という言葉が多用されている。




和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473  
◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/


 平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

 “公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中




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