Archive for 11 April 2006

11 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 146


 He drew back his hanger; and for that instant his sun was at noon. The others held back uneasily. Then Peter returned, and they saw at once that they would get no support from him. He would keep no girl in the Neverland against her will.
 "Wendy," he said, striding up and down, "I have asked the redskins to guide you through the wood, as flying tires you so."
 "Thank you, Peter."
 "Then," he continued, in the short sharp voice of one accustomed to be obeyed, "Tinker Bell will take you across the sea. Wake her, Nibs."
 Nibs had to knock twice before he got an answer, though Tink had really been sitting up in bed listening for some time.
 "Who are you? How dare you? Go away," she cried.
 "You are to get up, Tink," Nibs called, "and take Wendy on a journey."
 Of course Tink had been delighted to hear that Wendy was going; but she was jolly well determined not to be her courier, and she said so in still more offensive language. Then she pretended to be asleep again.
 "She says she won't!" Nibs exclaimed, aghast at such insubordination, whereupon Peter went sternly toward the young lady's chamber.
 "Tink," he rapped out, "if you don't get up and dress at once I will open the curtains, and then we shall all see you in your negligee."
 This made her leap to the floor. "Who said I wasn't getting up?" she cried.

 トゥートゥルズは、吊り皮の短剣に手をかけました。この瞬間、トゥートゥルズは場面の主役に躍り出ました。他の子供達は落ちつかない顔をして、後ずさりしたのです。その時、ピーターが戻ってきました。ピーターを一目見て、子供達はピーターに加勢してもらえないことが分かりました。ピーターは、無理強いして女の子を捕らえておこうなどとは、する筈はないのです。
 「ウェンディ、」部屋の中を大股で歩き回りながら、ピーターは言いました。「インディアン達に、森の中を案内していくように頼んでおいた。飛んで行くのは、君たちにはとても疲れることだからね。」
 「ありがとう。ピーター。」
 「それから、」いつも自分の言葉に人々が従うことが当り前になっている者の用いる鋭く短い口調で、ピーターは付け加えました。「ティンカー・ベルに、海の上を案内してもらう。ティンクを起こしてくれ、ニブズ。」
 「ニブズは、返事をもらう前に2度戸を叩かなければなりませんでした。実際には、ティンクはもうしばらくの間、ベッドの中で体を起こして聞き耳を立てていたのですけれど。
 「誰なの。何の用?あっちに行って。」ティンクは叫びました。
 「起きるんだ。そしてウェンディを連れて、遠くに出かけるんだ。」ニブズが呼び掛けました。
 勿論、ティンクは、ウェンディがいなくなるのを知って喜んでいました。でもティンクは、ウェンディなんかのお使いをするのはごめんだと、心に決めていました。そしてさらに不躾な言葉を使って、そう告げたのです。それから、ティンクはまた、眠り込んだ振りをしました。
 「ティンクは、嫌だと言ってるよ。」反抗的な態度に唖然として、ニブズが叫びました。これを聞くと、即座にピーターは、厳しい面持ちで妖精の乙女の小部屋に向かいました。
 「ティンク、」ピーターは、声を上げて言いました。「直ぐに起きて身支度を調えないと、カーテンを引いてしまうぞ。そうしたら、みんなに下着の姿を見られてしまうんだぞ。」
 この言葉に、ティンクは飛び起きました。「起きないなんて言ってないわよ。」ティンクは叫びました。

 ピーターの行う行動は常に紳士的でフェアである。しかし彼の実行するフェア・プレイは、他者の心を慮ってのものでは決してなく、単なる機械的な行動原理、あるいは単純な自己満足の欲求に従うものでしかない。

用語メモ
 insubordination(不服従):ピーターは常に絶対権力者として命令を下し、周囲が彼の意志に従う(obey)のが当然だと思っている。そしてネバーランドという世界では、ピーターの意志のおもむくままに全てが進行する。



◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー英雄―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中




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