Archive for 13 April 2006

13 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 148


"And now, Peter," Wendy said, thinking she had put everything right, "I am going to give you your medicine before you go." She loved to give them medicine, and undoubtedly gave them too much. Of course it was only water, but it was out of a bottle, and she always shook the bottle and counted the drops, which gave it a certain medicinal quality. On this occasion, however, she did not give Peter his draught, for just as she had prepared it, she saw a look on his face that made her heart sink.
"Get your things, Peter," she cried, shaking.
"No," he answered, pretending indifference, "I am not going with you, Wendy."
"Yes, Peter."
"No."
To show that her departure would leave him unmoved, he skipped up and down the room, playing gaily on his heartless pipes. She had to run about after him, though it was rather undignified.
"To find your mother," she coaxed.
Now, if Peter had ever quite had a mother, he no longer missed her. He could do very well without one. He had thought them out, and remembered only their bad points.
"No, no," he told Wendy decisively; "perhaps she would say I was old, and I just want always to be a little boy and to have fun."
"But, Peter -- "
"No."
And so the others had to be told.
"Peter isn't coming."
Peter not coming! They gazed blankly at him, their sticks over their backs, and on each stick a bundle. Their first thought was that if Peter was not going he had probably changed his mind about letting them go.

 「じゃあ、ピーター。」何もかも問題は片付いたと考えて、ウェンディは言いました。「出かける前にお薬をあげるわね。」ウェンディは、子供達にお薬をあげるのが好きでした。そして余分にあげてしまうことが多かったのです。勿論そのお薬というのは、ただの水でした。でもちゃんと瓶から出していましたし、ウェンディはいつも瓶を振って、滴の数を数えて飲ましていました。この動作が、お薬らしい効能をもたらしていたのです。けれども今回は、ウェンディはピーターにお薬を飲ませることはできませんでした。お薬の用意ができた時、ウェンディはピーターの顔の上に、気持ちが萎えてしまうような表情を見て取ったからです。
 「支度をしてちょうだい、ピーター。」ウェンディは震えながら叫びました。
 「嫌だね。」ピーターは、無表情を装って答えました。「君たちとは一緒に行かないよ。」
 「来てちょうだい、ピーター。」
 「嫌だ。」
 ウェンディが行ってしまってもちっとも構わないということを示すために、ピーターは陽気な調べを笛で奏でながら、部屋の中をスキップして周りました。ウェンディは、ピーターの後をついて走らなければなりませんでした。これは少々みっともない姿ではありました。
 「お母さんが見つかるのよ。」ウェンディは、誘いかけるように言いました。
 さて、もしピーターが以前にお母さんを持っていたとしても、ピーターはもうお母さんのことを恋しいなんて思ってはいませんでした。ピーターは、お母さんなしで十分うまくやっていけました。ピーターはお母さんのことは考え尽くして、お母さんの悪いところばかり覚えていたのでした。
 「駄目だよ。」ピーターは、断固たる口調でウェンディに告げました。「お母さんは、僕は大きくなった、と言うに違いない。でも僕はずっと小さな子のままでいて、楽しいことばかりしていたいんだ。」
 「でも、ピーター、、、」
 「駄目だね。」
 そういう訳で、他の子供達もピーターが来ないことを告げられることになりました。
 ピーターは来ないんだ。」
 ピーターが来ないなんて!背中に包みが結わえられた杖を背負ったまま、子供達は目を丸くしてピーターを見つめました。子供達が最初に考えたのは、もしピーターが来ないのだったら、ピーターは気が変わって、みんなを行かせてくれないかもしれない、ということでした。

 笛を奏でる古代ギリシアの牧羊神パンの再来であるピーターは、憂いを知らぬ快活さに恵まれた代りに、他の者へ対する思いやりを全く抱くことのない、“heartless”な心を持つものであった。

用語メモ
 stick and bundle:杖の先に身の回り品の入った包みを結わえる、というのは旅に出かける時の典型的な身支度である。勿論このお話が書かれた20世紀初めの時代風俗とは異なる風体である。これは子供達が演じる冒険やお伽話の中の装いなのである。



◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー英雄―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm



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