Archive for 16 April 2006

16 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 151


 The Piccaninnies, on their part, trusted implicitly to his honour, and their whole action of the night stands out in marked contrast to his. They left nothing undone that was consistent with the reputation of their tribe. With that alertness of the senses which is at once the marvel and despair of civilised peoples, they knew that the pirates were on the island from the moment one of them trod on a dry stick; and in an incredibly short space of time the coyote cries began. Every foot of ground between the spot where Hook had landed his forces and the home under the trees was stealthily examined by braves wearing their mocassins with the heels in front. They found only one hillock with a stream at its base, so that Hook had no choice; here he must establish himself and wait for just before the dawn. Everything being thus mapped out with almost diabolical cunning, the main body of the redskins folded their blankets around them, and in the phlegmatic manner that is to them, the pearl of manhood squatted above the children's home, awaiting the cold moment when they should deal pale death.

 ピカニニー族としては、フックがこの慣例を守ることを暗黙の了承としていたのである。従ってこの一夜における彼等の戦略行動は、フックのとったものとは対照的なものとなった。ピカニニー族は、一族の誉れに関わることは全て規定の通りに行ったのである。文明人の驚異の的でもあり、また同時に絶望の源でもある感覚の鋭敏さによって、最初に海賊の一人が乾いた小枝を踏んだ時に既に、彼等は海賊達が島に足を踏み入れたことを悟っていた。そして信じられぬ程の短い間に、コヨーテを模した叫びが発せられたのである。フックが彼の勢力を上陸させた地点と木々の根元にある地下の隠れ家との間の状況は、モカシンを前後逆に履いた勇者によって内密に隈無く探査されたのである。彼等は、その間に小川がふもとにある丘はたった一つしかないことを確認した。従って、フックには選択の余地は全くなかった。この丘に陣を構え、夜明けの直前まで待機するのである。地勢の全てが、ほとんど悪魔的でさえある狡知によって調べあげられていた。インディアン達の主力の一族の華である男達は、子供達の隠れ家の真上で、周囲にたたんだ毛布を並べ、いつもの沈着冷静な態度でしゃがみ込み、敵に死を与える時が来るのを待ち受けていたのであった。

 もっともらしい荘重な雰囲気の記述を用いて、あり得ないナンセンスが巧妙に語られようとしている。記述の手法を駆使することにより成し遂げられるペテン行為とは、まさしく文学という技の神髄であるに違いない。通例の世の真実や、万人の既に納得する常識などを語る記述は、児戯に等しいものと看做されなければならない。現実世界とは全く異なった公理系がそこには展開されるのである。

用語メモ
 pearl(真珠):最も優れたものの代名詞である。日本語に対応するものを求めれば“華”となる。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー(英雄)―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm












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