Archive for 18 April 2006

18 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 153


Around the brave Tiger Lily were a dozen of her stoutest warriors, and they suddenly saw the perfidious pirates bearing down upon them. Fell from their eyes then the film through which they had looked at victory. No more would they torture at the stake. For them the happy hunting-grounds now. They knew it; but as their father's sons they acquitted themselves. Even then they had time to gather in a phalanx that would have been hard to break had they risen quickly, but this they were forbidden to do by the traditions of their race. It is written that the noble savage must never express surprise in the presence of the white. Thus terrible as the sudden appearance of the pirates must have been to them, they remained stationary for a moment, not a muscle moving; as if the foe had come by invitation. Then, indeed, the tradition gallantly upheld, they seized their weapons, and the air was torn with the war-cry; but it was now too late.

 勇敢なタイガー・リリーを取り巻いていた、12人程の屈強な戦士達は、突然節操を知らぬ海賊どもが襲いかかって来ることに気付いたのであった。これまで確信しきっていた勝利の夢は、一瞬のうちに消え果ててしまった。もはや、敵を杭に縛り付けて罰する残酷な喜びは得られぬものとなった。自らの至福の狩り場のみが残されていた。彼等はこの事実を悟ったのである。しかしインディアン達は、父祖の教えの通りに身を処した。その時でさえも彼等には身を寄せ合って方陣を組み、簡単には打ち破ることの出来ないこの陣形を用いて戦う余地は残されていた。しかし一族の伝統によれば、この戦法を採用することは固く禁じられていたのである。高貴なる野蛮人達は、白人の眼前で驚嘆の表情を装うことはならぬと定められていた。海賊達の突然の出現は、驚愕の的であった筈であるが、インディアン達は暫く微動だにせず、筋肉の一つも動かすことなく、あたかも敵が招待に応じて来訪したかのように振舞ってみせたのである。その後に伝統に雄々しく従って、彼等は武器を手に取り、戦いの雄叫びが鳴り響いた。しかしもう既に、時は遅かったのである。

 インディアン達について語るこのあたりの記述は、いかめしい歴史的記録文書のパロディになっている。もっともらしい威容を備えた言葉に限って、内実は怪しいものが多い。しかし文学の表現技法の場合においては、これはむしろ精妙な記述の工夫として正しく評価されなければならない。

用語メモ
 happy hunting ground(至福の狩り場):インディアンの言葉で“死後の世界”を指すもの。海賊達の世界の符牒と並んで、インディアンの世界の独特の言い回しもこのお話の中では多用されている。おそらく当時の子供達の関心を惹き付けた、怪しく誘惑に満ちた言葉であったのだろう。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー(英雄)―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm



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