Archive for 19 April 2006

19 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 154


 It is no part of ours to describe what was a massacre rather than a fight. Thus perished many of the flower of the Piccaninny tribe. Not all unavenged did they die, for with Lean Wolf fell Alf Mason, to disturb the Spanish Main no more, and among others who bit the dust were Geo. Scourie, Chas. Turley, and the Alsatian Foggerty. Turley fell to the tomahawk of the terrible Panther, who ultimately cut a way through the pirates with Tiger Lily and a small remnant of the tribe.
 To what extent Hook is to blame for his tactics on this occasion is for the historian to decide. Had he waited on the rising ground till the proper hour he and his men would probably have been butchered; and in judging him it is only fair to take this into account. What he should perhaps have done was to acquaint his opponents that he proposed to follow a new method. On the other hand, this, as destroying the element of surprise, would have made his strategy of no avail, so that the whole question is beset with difficulties. One cannot at least withhold a reluctant admiration for the wit that had conceived so bold a scheme, and the fell genius with which it was carried out.

 これから行われた、戦闘というよりもむしろ虐殺というべきものの実体について詳細に語るのは、今ここで行うべきことではあるまい。こうして多くのピカニニー族の勇者は命を散らせていったのであった。命を失ったものの全てが、報復をすることが適わなかった訳ではない。“痩せた狼”と共にアルフ・メイソンも倒れ、スペイン本土の治安を乱すことも無くなった。砂を噛み締めることとなったもののうちにゲオ・スク−リーとチャス・ターリーとアルサティア人のフォガティーもいた。ターリーは恐ろしいパンサーの斧に倒された。パンサーは最終的には海賊達の包囲を切り開き、タイガー・リリーと僅かな生き残りを連れて、難を逃れたのであった。
 この一戦におけるフックの戦術にいかほどの責めを負わすべきかは、後世の歴史家の判断するところとなるだろう。彼が昇り坂の地点で適切な時刻まで待機していたならば、彼と手勢のもの達は虐殺の浮き目を見ていたであろう。フックの行為の是非を判断するにあたっては、この点をこそ考慮すべきである。彼が敵に対して行わなければならなかったであろうことは、相手に対して自分が新奇の戦術を採用しようとしていることを、通知することであった。また一方、急襲の意義を放棄してしまうことは、彼の戦術を全く効果なきものにしてしまうものであることを考えれば、この一件は好悪の判断を下すにはあまりにも困難な問題となるだろう。少なくともこれほどまでに大胆極まりない戦略を構想したものの知略と、それを実行に移した残忍な才能に対しては、賞賛の念を覚えない訳にはいかないのである。

 単純な事柄を持って回った気取った文体で記述することにより、既成事実を強引に作り出してしまうというペテン的技法が見事に用いられている。正直な正しい嘘のつき方の一例である。そこには現実世界にはない新たな時空の創世行為が読み取れさえもする。

用語メモ
 Alsatian(アルサティア人):Alsatiaとは、フランスとドイツの間のライン川の西方、スイスとの境のあたりにある地方の名である。“inhabitant of the other bank of the Rhine”の意であった。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー(英雄)―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm





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