Archive for 22 April 2006

22 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 157


The question now was how to get down the trees, or how to get his dogs down? He ran his greedy eyes over them, searching for the thinnest ones. They wriggled uncomfortably, for they knew he would not scruple to ram them down with poles.
In the meantime, what of the boys? We have seen them at the first clang of the weapons, turned as it were into stone figures, open-mouthed, all appealing with outstretched arms to Peter; and we return to them as their mouths close, and their arms fall to their sides. The pandemonium above has ceased almost as suddenly as it arose, passed like a fierce gust of wind; but they know that in the passing it has determined their fate.
Which side had won?
The pirates, listening avidly at the mouths of the trees, heard the question put by every boy, and alas, they also heard Peter's answer.
"If the redskins have won," he said, "they will beat the tom-tom; it is always their sign of victory."
Now Smee had found the tom-tom, and was at that moment sitting on it. "You will never hear the tom-tom again," he muttered, but inaudibly of course, for strict silence had been enjoined. To his amazement Hook signed him to beat the tom-tom, and slowly there came to Smee an understanding of the dreadful wickedness of the order. Never, probably, had this simple man admired Hook so much.
Twice Smee beat upon the instrument, and then stopped to listen gleefully.

 次の問題はいかにして木の通路を下るか、あるいは手下に下らせるかであった。フックは手下共に目を凝らして、最も体の細いものは誰かを確かめようとした。彼等は落ち着かなく体を揺すっていた。フックがためらいもなく彼等を棒で押し込むであろうことを知っていたからである。
 一方、子供達はどうしていたのであろうか。彼等が刃と刃が打ち鳴らされた戦闘の勃発の折、口を開けピーターの方に助けを求めて手を差し伸べながら石のように凍り付いてしまった場面は、既に目にしてきた。子供達の口が閉じられ、両手が下に降ろされたあたりで、彼等の許に戻ることとしよう。地上の大混乱は、招来したのと同様に突然に終息を迎えた。あたかも突風が吹き過ぎていったかのようであった。けれども子供達は、それが自分達の運命を左右するものであることを知っていた。
 勝利を手にしたのはどちらの側であろうか?
 木の穴の前で耳を澄ましていた海賊達は、子供達がこの問いを発し、ピーターがそれに答えるところを聞いてしまったのである。
 「インディアン達が勝ったなら、トムトムを叩くだろう。これが勝利を告げる合図なんだ。」ピーターは言った。
 この時スミーは、トムトムを見つけ出した。彼が座っていたのが、丁度トムトムの上だったのである。「お前は二度とトムトムの響きを耳にすることは無いぜ。」スミーは心の裡でつぶやいた。全くの沈黙を守るように命令が下されていたのである。驚いたことに、フックはトムトムを打つようにと身振りで示した。そしてスミーにも、ゆっくりとその命令に込められた邪悪な意味が分かって来たのである。この鈍重な男は、この時ほどフックのことを称える気持ちになったことはなかったであろう。
 二度、スミーはこの楽器を打ち鳴らした。そしてその結果を、期待を込めて待ち窺った。

用語メモ
 wickedness(邪悪さ):正義に反した、非道な行為のことである。海賊とは邪悪さの具現化に他ならない。逆賊として国王に謀反を企て、人道に背を向ける行為は、子供達の美意識においては最も恰好良いものと判断されることとなる。子供達の審美的な評価基準においては、欠くことのできない要素である。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー(英雄)―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm



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