Archive for 25 April 2006

25 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 160


 They were tied to prevent their flying away, doubled up with their knees close to their ears; and for the trussing of them the black pirate had cut a rope into nine equal pieces. All went well until Slightly's turn came, when he was found to be like those irritating parcels that use up all the string in going round and leave no tags with which to tie a knot. The pirates kicked him in their rage, just as you kick the parcel (though in fairness you should kick the string); and strange to say it was Hook who told them to belay their violence. His lip was curled with malicious triumph. While his dogs were merely sweating because every time they tried to pack the unhappy lad tight in one part he bulged out in another, Hook's master mind had gone far beneath Slightly's surface, probing not for effects but for causes; and his exultation showed that he had found them. Slightly, white to the gills, knew that Hook had surprised his secret, which was this, that no boy so blown out could use a tree wherein an average man need stick. Poor Slightly, most wretched of all the children now, for he was in a panic about Peter, bitterly regretted what he had done. Madly addicted to the drinking of water when he was hot, he had swelled in consequence to his present girth, and instead of reducing himself to fit his tree he had, unknown to the others, whittled his tree to make it fit him.

 子供達は、飛んでいけないようにするために、両膝が耳の辺りに来るまで体を折り畳んで縛られていた。彼等を丸め込むために、海賊達はロープを切って9等分にしていたのであった。スライトリーを縛る番が来るまでは順調だった。しかし彼は、ロープを巻きつけるのに手一杯で結び目を作る余裕を与えない、厄介な荷物みたいな子であることが分かった。海賊達は怒りに任せて、荷物を蹴飛ばすように彼を蹴飛ばした。(本当ならロープの方を蹴飛ばすのが公平の筈なのだが。)しかし不思議なことに、海賊達に手荒い扱いを控えるように命じたのはフックであった。フックの唇は、勝利の思いにほくそ笑んでいた。この哀れな少年を縛り付けようとどこかを押さえ込もうとする度に、反対側が飛び出すので手下共がただ汗を流しているだけの時に、フックの優れた洞察力はスライトリーの体の表面ばかりでなくその内部にまで及び、結果を探るばかりでなく原因までをも突き止めようとしていたのである。そしてフックの高揚した顔は、彼が望むものを見つけ出したことを示していた。スライトリーは、フックが彼の秘密を嗅ぎ付けたことを知って、喉元まで青ざめさせた。その秘密というのは、これほど体を膨らませてしまった子は、普通の大人が押し込む棒を必要とするような木を通路に用いることは出来ない、ということであった。哀れなスライトリーは、子供達の中でも最も惨めな思いを感じていた。ピーターの危険を思い遣って心を乱し、自分の犯してしまった間違いを悔いていたのである。暑さを感じた時に水を大量に飲んでしまう癖に陥ってしまい、その結果体を大変な大きさに膨らませてしまっていた。そして彼は自分の木に体の大きさを合わせる代わりに、他の子供達の目を盗んで自分の体に合わせて木を削ってしまっていたのである。

 フックの優れた知的能力を語るためのもう一つのエピソードである。論理的推論と直感的把握力の双方において群を抜いているのがこの海賊の首領なのである。

用語メモ
 truss:鳥の丸焼きなどを調理するために、両足を胸に合わせ、両翼をぴったり体側に押し付けるようにして紐で括り付ける縛り方を言う。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー(英雄)―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm




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