Archive for 04 April 2006

04 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 139


 "You are so queer," he said, frankly puzzled, "and Tiger Lily is just the same. There is something she wants to be to me, but she says it is not my mother."
 "No, indeed, it is not," Wendy replied with frightful emphasis. Now we know why she was prejudiced against the redskins.
 "Then what is it?"
 "It isn't for a lady to tell."
 "Oh, very well," Peter said, a little nettled. "Perhaps Tinker Bell will tell me."
 "Oh yes, Tinker Bell will tell you," Wendy retorted scornfully. "She is an abandoned little creature."
 Here Tink, who was in her bedroom, eavesdropping, squeaked out something impudent.
 "She says she glories in being abandoned," Peter interpreted.
 He had a sudden idea. "Perhaps Tink wants to be my mother?"
 "You silly ass!" cried Tinker Bell in a passion.
 She had said it so often that Wendy needed no translation.
 "I almost agree with her," Wendy snapped. Fancy Wendy snapping! But she had been much tried, and she little knew what was to happen before the night was out. If she had known she would not have snapped.

「君は何を考えているんだろう?」ピーターは、本当に訳が分からなくなってしまって、言いました。「タイガー・リリーも、そんな風なんだ。タイガー・リリーも僕の何かになりたいらしいんだけど、それはお母さんとは違うって言うんだ。」
「確かにそうでしょうね。」ウェンディは、驚くほど強い口調で答えました。これでウェンディが、インディアン達のことを好きになれない訳がお分かりでしょう。
「じゃあ、何になりたいんだろう?」
「そんなこと、女の子が話すことじゃないわ。」
「じゃあ、いいよ。」ピーターは少しいらいらしてきて、言いました。「タイガー・リリーが教えてくれるさ。」
「そうね、タイガー・リリーなら教えてくれるでしょうね。」ウェンディは、馬鹿にしたような口調で答えました。「あの子は、とんでもないあばずれですものね。」
ここで、自分の部屋で聞き耳を立てていたティンクが、何か失礼なことを口走りました。
「ティンクは、タイガー・リリーはあばずれで満足だって言ってるよ。」ピーターが翻訳しました。
突然、ピーターはひらめきました。「きっと、ティンクは、僕のお母さんになりたいんだね。」
「この、まぬけ!」ティンカー・ベルは、怒って言いました・
ティンクはこの言葉をあまりによく使うので、ウェンディは翻訳してもらわなくても意味が分かりました。
「私も、ティンクと同じ意見よ。」ウェンディは怒鳴るように言いました。ウェンディが怒鳴るなんて!けれどもウェンディは、とても気分を害していたのです。そしてウェンディは、この晩これから何が起こることになるのか、ちっとも分かっていませんでした。もしも分かっていたならば、怒鳴ったりはしなかったことでしょう。

 ピーターは、人間的な感情が全く理解できない。人間的な様々の辛く悲しい思いとは、正反対のものとして生成してしまったのが、ピーターという存在だからである。

用語メモ
 非人情:人間らしい執着や拘泥を脱した、全てを俯瞰する醒めた感覚が“非人情”という言葉で呼ばれる。これは当然、人間らしいいたわりの気持ちや思いやりの心を解さない冷たい感覚なので、このお話においては“heartless”という言葉で呼ばれる、子供に特有の心性が対応するものであろう。





和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/


 平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

 “公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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