Archive for 08 April 2006

08 April

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 143


 "Did they ever go back?"
 "Let us now," said Wendy, bracing herself up for her finest effort, "take a peep into the future"; and they all gave themselves the twist that makes peeps into the future easier. "Years have rolled by, and who is this elegant lady of uncertain age alighting at London Station?"
 "O Wendy, who is she?" cried Nibs, every bit as excited as if he didn't know.
 "Can it be -- yes -- no -- it is -- the fair Wendy!"
 "Oh!"
 "And who are the two noble portly figures accompanying her, now grown to man's estate? Can they be John and Michael? They are!"
 "Oh!"
 "`See, dear brothers,' says Wendy pointing upwards, `there is the window still standing open. Ah, now we are rewarded for our sublime faith in a mother's love.' So up they flew to their mummy and daddy, and pen cannot describe the happy scene, over which we draw a veil."
 That was the story, and they were as pleased with it as the fair narrator herself. Everything just as it should be, you see. Off we skip like the most heartless things in the world, which is what children are, but so attractive; and we have an entirely selfish time, and then when we have need of special attention we nobly return for it, confident that we shall be rewarded instead of smacked.
 So great indeed was their faith in a mother's love that they felt they could afford to be callous for a bit longer.

 「それでみんなは家には戻ったのかな?」
 「さて、それでは、彼等の未来を覗いてみましょう。」ウェンディは言うと、両腕で自分の体を抱きしめました。そして子供達も全員が、未来を覗くのが容易くなる一ひねりを自分の体に加えました。「年月が過ぎ去りました。ロンドンの鉄道駅で汽車から降り立った、この優雅な淑女は一体誰でしょう?」
 「ウェンディ、その人一体誰なの?」ニブズは叫び声をあげました。まるでちっとも分からない、と言わんばかりにわくわくした顔つきです。
 「ひょっとして、もしかしたら、ウェンディだ!」
 「わあ!」
 「そして彼女に付き添っている、立派な姿をした二人の紳士は一体誰でしょう?まさか、ジョンとマイケルでしょうか?そうなのです。」
 「わあ!」
 「『ジョン、マイケル、御覧なさい。』ウェンディは上の方を指差して言います。『あそこにまだ、窓が開いているでしょう。私達がお母さんの愛情を決して疑うことがなかったおかげよ。』そして3人は窓まで飛び上がり、お母さんとお父さんの許に戻りました。その喜びに満ちた情景は、とても筆には描くことの出来ない程のものです。ですからここでお話もお終いと致しましょう。」
 これがウェンディのお話でした。語り手のウェンディと同じように聞き手の子供達もみんな満足しきっていました。何もかもが、思い通りのそのままになるのです。この世で一番薄情なもの、子供達のようにとんで行ってしまいましょう。子供達というものはみんなそうなのです。けれどもなんと魅力的なことでしょう。そして好きなだけ自分勝手にふるまって、それから特別にやさしくしてもらいたくなれば、おしおきを受けるかわりにごほうびをもらうことを疑いもせず、ゆうゆうと戻って来るのです。
 子供達はお母さんの愛情の深さを確信しきっていたので、もう少し勝手な振る舞いを続けることができるはずだと思っていたのです。

 ウェンディがウェンディのことをお話に語る様が語られたお話になっている。このお話を語ることによって暴露される、ウェンディも含めて子供達全員に染み付いた身勝手さは、作者バリの子供達一般に対する総括であり、この作品の基調となる感覚なのである。

用語メモ
 the twist that makes peeps into the future easier:バリ独特の奇想である。こういうことを言葉の遊びとして思い付くのが、文学の力というものだろう。




和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

 平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

 “公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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