Archive for 01 May 2006

01 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 166


 Peter slept on. The light guttered and went out, leaving the tenement in darkness; but still he slept. It must have been not less than ten o'clock by the crocodile, when he suddenly sat up in his bed, wakened by he knew not what. It was a soft cautious tapping on the door of his tree.
 Soft and cautious, but in that stillness it was sinister. Peter felt for his dagger till his hand gripped it. Then he spoke.
 "Who is that?"
 For long there was no answer: then again the knock.
 "Who are you?"
 No answer.
 He was thrilled, and he loved being thrilled. In two strides he reached the door. Unlike Slightly's door, it filled the aperture, so that he could not see beyond it, nor could the one knocking see him.
 "I won't open unless you speak," Peter cried.
 Then at last the visitor spoke, in a lovely bell-like voice.
 "Let me in, Peter."
 It was Tink, and quickly he unbarred to her. She flew in excitedly, her face flushed and her dress stained with mud.
 "What is it?"
 "Oh, you could never guess!" she cried, and offered him three guesses. "Out with it!" he shouted, and in one ungrammatical sentence, as long as the ribbons that conjurers pull from their mouths, she told of the capture of Wendy and the boys.

 ピーター・パンはまだ眠っていた。灯りが揺れ、消えて、部屋は暗闇に包まれた。けれどもピーターはまだ眠り続けていた。鰐時計で10時は過ぎている頃の筈だった。突然ピーターは、ベッドの中で体を起こした。何か分からぬものの気配を感じて目を覚ましたのだった。それは彼の木の通路の戸口を遠慮がちに叩く音だった。
 注意深く、そっと叩く音ではあった。しかしこの静寂の中では、それはむしろ無気味に思えた。ピーターは手を伸ばし、短剣を握り締めた。そしてピーターは、声を発した。
 「そこにいるのは、だれだ。」
 長い間、返事は返ってこかった。それから再びノックの音が聞こえた。
「誰だ?」
 やはり返事は無かった。
 ピーターはぞくっとする緊張を感じた。そして彼は、この感覚を得るのが気に入っていた。二歩、足を進めてピーターはドアのところにやってきた。スライトリーのドアとは異なり、戸口は通路をすっかり塞いでいた。だからピーターには向こう側は見えなかったし、ドアを叩くものもピーターの姿が見えなかった。
 「答えなければ、開けないぞ。」ピーターは言った。
 それからようやく声が聞こえた。それは可愛い鐘の音のような声だった。
 「入れてよ、ピーター。」
 それはティンクだった。ピーターは素早くドアの掛け金を外してやった。ティンクは興奮した様子で部屋に飛び込んだ。彼女の顔は紅潮していて、服は泥にまみれていた。
 「どうしたんだい?」
 「当てられっこないわよ。」ティンクは言って、3回で当ててみるように挑戦した。「さっさと言うんだ。」ピーターは叫んだ。そして奇術師が口から引っ張り出すリボンのような、文法を無視した長い一つきりの文で、ティンクはウェンディと子供達が捕らえられたことを語った。

 未知のものの及ぼす危険も、ピーターにとってはすべてゲームの一部でしかないので、心の不安やためらいを与えるものではない。天変地異も大難事も、ピーターの精神を活気づける好もしい刺戟でしかない。本当の感情はすべてフックが代行しているからであろう。

用語メモ
 sinister:元来は「左向きの」という意味であるが、「無気味な」、「不吉な」、「縁起の悪い」等の意味で用いられる。反対の“dexter”(右向きの)は、「幸運な」、「めでたい」の意となる。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

◇  教室が決まりました。西館の3Fにある第2コンピュータ室で開催の予定です。コンピュータの使い方をご存じの方は、当日お伝えするユーザー名とパスワードを用いてログインし、インターネットに接続することができます。“Daily Lecture”等の公開中のファイルを開いて、講座のテキストとして御覧になれます。ワードを起動して自分でメモ等を作成することもできます。データ保存のためのフロッピー・ディスクあるいはフラッシュメディアをご持参下さい。
 この機会にコンピュータやインターネットを試してみたいという方は、早めにお出で下されば使い方の説明を致します。

◇第1回目が連休の最中という、大変な日程で組まれていることが分かりました。初回欠席でも、受講には差し障りありません。2回目以降好きな時に出席して頂いて結構です。講座は4回連続ですが、毎回の講義内容は、その場の状況に合わせて随時工夫していく予定ですので、出席は単発でも構わないのです。当日の受講受付もできます。
 コンピュータの利用に親しんでいる方は、テキストを購入しなくても教室でインターネットに繋いで、物語の本文を参照することができます。コンピュータに不馴れな方のためには、書物のテキストを用意してあります。講座は2時から開始ですが、1時頃には講師は来ておりますので、質疑応答等行えます。
 あらかじめ、物語のどの部分を読んでみたいか、あるいはこのお話の解釈について疑問を感じる点等を用意しておいて頂ければ、これに対する解説として講義を行って行きます。
 対訳を作成してありますので、翻訳上の疑問点等をご指摘頂ければ、「意訳」の工夫などを話題にすることもできます。

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー(英雄)―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm




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