Archive for 14 May 2006

14 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 179


 So Tootles explained prudently, "You see, sir, I don't think my mother would like me to be a pirate. Would your mother like you to be a pirate, Slightly?"
 He winked at Slightly, who said mournfully, "I don't think so," as if he wished things had been otherwise. "Would your mother like you to be a pirate, Twin?"
 "I don't think so," said the first twin, as clever as the others. "Nibs, would -- "
 "Stow this gab," roared Hook, and the spokesmen were dragged back. "You, boy," he said, addressing John, "you look as if you had a little pluck in you. Didst never want to be a pirate, my hearty?"
 Now John had sometimes experienced this hankering at maths. prep.; and he was struck by Hook's picking him out.
 "I once thought of calling myself Red-handed Jack," he said diffidently.
 "And a good name too. We'll call you that here, bully, if you join."
 "What do you think, Michael?" asked John.
 "What would you call me if I join?" Michael demanded.
 "Blackbeard Joe."
 Michael was naturally impressed. "What do you think, John?" He wanted John to decide, and John wanted him to decide.
 "Shall we still be respectful subjects of the King?" John inquired.
 Through Hook's teeth came the answer: "You would have to swear, 'Down with the King.'"

 そういう訳で、トゥートゥルズは利口に語ってみせたのだった。「あのね、船長さん。僕のお母さんは、僕が海賊になるのは嫌なんじゃないかと思うんです。スライトリー、君のお母さんは、君に海賊になって欲しいのかな?」
 トゥートゥルズは、スライトリーに目配せをした。スライトリーは、重た気な口調で言った。「多分、そうだろうな。」実はそう思ってはいないみたいな口振りだった。「双子達、君たちのお母さんはどうなんだい?」
 「やっぱり、嫌だろうなあ。」他の子供達と同様に抜け目のない兄の方が答えた。「ニブズ、君の…」
 「こいつを黙らせろ!」フックが怒鳴った。代弁者を買って出たもの達は、引きずり戻された。「お前、」フックはジョンに向かって語りかけた。「お前は、少しは根性がありそうな面をしている。海賊になってみたいと思ったことはなかったかな、ぼうや。」
 実際、ジョンは数学の試験をしている時に、この思いにかられたことが何度かあった。そしてジョンは、フックが自分を選んで話しかけたことに心を動かされた。
 「僕は、“血まみれの手のジャック”と名乗ってみようと思ったことが、ありました。」おずおずとジョンは言った。
 「中々いい名前だ。そう呼んでやってもいいぞ。だが仲間になるのが先だ。」
 「君はどう思う、マイケル?」ジョンは尋ねた。
 「僕が海賊になったら、何と呼んでくれる?」マイケルは問い返した。
 「黒髭ジョー。」
 マイケルも当然心を動かされた。「どうしよう、ジョン?」マイケルは、ジョンに決めて欲しかった。しかしジョンは、マイケルに決めて欲しかった。
 「海賊になっても、国王陛下の臣民でいられるのですか?」ジョンは尋ねた。
 フックは、口許をゆがめながら答えた。「国王に叛逆を誓うのが条件だ。」

 海賊とは、単なる無法者の強盗集団ではない。既存の権威と伝統に公然と叛旗を翻す、反逆者としての生き様のマニフェストとして海賊稼業がある。古典的教養と芸術的センスの双方を身に付けていることがその欠かせない資格となる。オスカー・ワイルドが名乗ったような“審美主義者”であり、ヴォルテールの影響を受けた啓発された人々が名乗ったような“自由人”が海賊なのである。しかし保守的な文化的後進国であった英国では“自由人”(libertine)は“ならず者”と同一視された。

用語メモ
 stow:(海事)船荷を船倉にしまい込む、積載する
 gab:おしゃべり。“stow your gab”で“黙れ”の意となる。





◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

◇  教室が決まりました。西館の3Fにある第2コンピュータ室で開催の予定です。コンピュータの使い方をご存じの方は、当日お伝えするユーザー名とパスワードを用いてログインし、インターネットに接続することができます。“Daily Lecture”等の公開中のファイルを開いて、講座のテキストとして御覧になれます。ワードを起動して自分でメモ等を作成することもできます。データ保存のためのフロッピー・ディスクあるいはフラッシュメディアをご持参下さい。
 この機会にコンピュータやインターネットを試してみたいという方は、早めにお出で下されば使い方の説明を致します。

◇第1回目が連休の最中という、大変な日程で組まれていることが分かりました。初回欠席でも、受講には差し障りありません。2回目以降好きな時に出席して頂いて結構です。講座は4回連続ですが、毎回の講義内容は、その場の状況に合わせて随時工夫していく予定ですので、出席は単発でも構わないのです。当日の受講受付もできます。
 コンピュータの利用に親しんでいる方は、テキストを購入しなくても教室でインターネットに繋いで、物語の本文を参照することができます。コンピュータに不馴れな方のためには、書物のテキストを用意してあります。講座は2時から開始ですが、1時頃には講師は来ておりますので、質疑応答等行えます。
 あらかじめ、物語のどの部分を読んでみたいか、あるいはこのお話の解釈について疑問を感じる点等を用意しておいて頂ければ、これに対する解説として講義を行って行きます。
 対訳を作成してありますので、翻訳上の疑問点等をご指摘頂ければ、「意訳」の工夫などを話題にすることもできます。

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。
◇18年度開講中の各講座のトピックを開設しました。
 受講生以外の外部の方も御覧になれます。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:ユニバーサル、ユニコーン―『最後のユニコーン』におけるユニコーンの存在論的指標”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/universal.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー(15):レッド・ブル―無知と盲目の影”を新規公開
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/shadow.htm







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