Archive for 16 May 2006

16 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 181


 "Are they to die?" asked Wendy, with a look of such frightful contempt that he nearly fainted.
 "They are," he snarled. "Silence all," he called gloatingly, "for a mother's last words to her children."
 At this moment Wendy was grand. "These are my last words, dear boys," she said firmly. "I feel that I have a message to you from your real mothers, and it is this: `We hope our sons will die like English gentlemen.'"
 Even the pirates were awed, and Tootles cried out hysterically, "I am going to do what my mother hopes. What are you to do, Nibs?"
 "What my mother hopes. What are you to do, Twin?"
 "What my mother hopes. John, what are -- "
 But Hook had found his voice again.
 "Tie her up!" he shouted.
 It was Smee who tied her to the mast. "See here, honey," he whispered, "I'll save you if you promise to be my mother."
 But not even for Smee would she make such a promise. "I would almost rather have no children at all," she said disdainfully.
 It is sad to know that not a boy was looking at her as Smee tied her to the mast; the eyes of all were on the plank: that last little walk they were about to take. They were no longer able to hope that they would walk it manfully, for the capacity to think had gone from them; they could stare and shiver only.

 「みんな、殺されてしまうのね?」ウェンディはあからさまに軽蔑の表情を浮かべてこう尋ねたので、フックは殆ど気を失いかけた。
 「その通りだ。」フックは吐き出すように言った。「「いいか、お前達。息子達に与えるお母さんの最後の言葉を聞け。」フックはほくそ笑みながら言った。
 この時のウェンディの振る舞いは、立派なものだった。「息子達、これが私の最期の言葉です。」ウェンディはしっかりした口調で語った。「あなた達の本当のお母さんから伝えられた伝言を述べます。“息子達が英国紳士らしく死ぬことを望みます。”」
 これには海賊達さえもが気を呑まれてしまった。トゥートゥルズは昂った様子で叫んだ。「僕はお母さんの望む通りにするぞ。ニブズ、君はどうだ?」
 「僕もお母さんの望む通りだ。双子、君達はどうだ?」
 「お母さんの望む通りだ。ジョン、君は…」
 しかしフックが再び我に返った。
 「ウェンディを縛り上げろ!」フックは命じた。
 ウェンディを帆柱に縛り付けたのは、スミーだった。「お嬢ちゃん、いいか。」スミーは囁きかけた。「俺のお母さんになってくれたら、命を助けてやるよ。」
 しかしスミーのためであろうとも、ウェンディはこんな約束をすることはできなかった。「そんなことをするくらいなら、子供なんていりません。」見下したようにウェンディは答えた。
 スミーがウェンディを帆柱に縛り付けている時、子供達の誰一人としてウェンディの方に目を向けていなかったのは、悲しいことだった。子供達の目は、みな処刑の板の方に向けられていた。これが、彼等が歩く最後の数歩となるのだった。彼等はもはや、雄々しく最後の時を迎えてみせようなどと考えることさえ出来なかった。もう何も考えることすらできない状態だったからだ。ただ板を眺め、身を震わせていたのである。

 女は気丈だが、男は無鉄砲な蛮勇を示すばかりで、肝腎な時に気を確かに保っていることもない。それができるのは、ピーターのように何の屈託も配慮も無い、実は生まれついての「心無し」(heartless)の子だけなのである。

用語メモ
 heartless:人間としての深く厚い情誼を持たないことである。子供達は、実はみなそうなのである。これがこのお話の重要な主題の一つとなっている。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

◇  教室が決まりました。西館の3Fにある第2コンピュータ室で開催の予定です。コンピュータの使い方をご存じの方は、当日お伝えするユーザー名とパスワードを用いてログインし、インターネットに接続することができます。“Daily Lecture”等の公開中のファイルを開いて、講座のテキストとして御覧になれます。ワードを起動して自分でメモ等を作成することもできます。データ保存のためのフロッピー・ディスクあるいはフラッシュメディアをご持参下さい。
 この機会にコンピュータやインターネットを試してみたいという方は、早めにお出で下されば使い方の説明を致します。

◇第1回目が連休の最中という、大変な日程で組まれていることが分かりました。初回欠席でも、受講には差し障りありません。2回目以降好きな時に出席して頂いて結構です。講座は4回連続ですが、毎回の講義内容は、その場の状況に合わせて随時工夫していく予定ですので、出席は単発でも構わないのです。当日の受講受付もできます。
 コンピュータの利用に親しんでいる方は、テキストを購入しなくても教室でインターネットに繋いで、物語の本文を参照することができます。コンピュータに不馴れな方のためには、書物のテキストを用意してあります。講座は2時から開始ですが、1時頃には講師は来ておりますので、質疑応答等行えます。
 あらかじめ、物語のどの部分を読んでみたいか、あるいはこのお話の解釈について疑問を感じる点等を用意しておいて頂ければ、これに対する解説として講義を行って行きます。
 対訳を作成してありますので、翻訳上の疑問点等をご指摘頂ければ、「意訳」の工夫などを話題にすることもできます。

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。
◇18年度開講中の各講座のトピックを開設しました。
 受講生以外の外部の方も御覧になれます。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:ユニバーサル、ユニコーン―『最後のユニコーン』におけるユニコーンの存在論的指標”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/universal.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー(15):レッド・ブル―無知と盲目の影”を新規公開
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/shadow.htm




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