Archive for 02 May 2006

02 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 167


 Peter's heart bobbed up and down as he listened. Wendy bound, and on the pirate ship; she who loved everything to be just so!
 "I'll rescue her!" he cried, leaping at his weapons. As he leapt he thought of something he could do to please her. He could take his medicine.
 His hand closed on the fatal draught.
 "No!" shrieked Tinker Bell, who had heard Hook mutter about his deed as he sped through the forest.
 "Why not?"
 "It is poisoned."
 "Poisoned? Who could have poisoned it?"
 "Hook."
 "Don't be silly. How could Hook have got down here?"
 Alas, Tinker Bell could not explain this, for even she did not know the dark secret of Slightly's tree. Nevertheless Hook's words had left no room for doubt. The cup was poisoned.
 "Besides," said Peter, quite believing himself "I never fell asleep."
 He raised the cup. No time for words now; time for deeds; and with one of her lightning movements Tink got between his lips and the draught, and drained it to the dregs.

 ティンクの言葉に耳を傾けながら、ピーターの心臓は胸の裡で踊った。ウェンディが縛り付けられて、海賊船に連れ去られた。だらしないことが我慢のならないあのウェンディが、海賊船に。
 「僕がウェンディを助ける。ピーターは叫んで、武器のところに跳んで行った。そうしながら、ピーターは何かウェンディの喜ぶことをしたいと思った。お薬を飲んでやることができる。
 ピーターの手は、恐ろしい毒薬の器を掴んだ。
 「駄目よ!」ティンカー・ベルが甲高い声を上げた。フックが森の中を戻って行く時に、この毒薬のことをつぶやいているのを耳にしたのだった。
 「どうして?」
 「毒が入ってるの。」
 「毒だって?誰が毒なんか入れられるんだい?」
 「フックよ。」
 「馬鹿なこと言うんじゃない。フックがどうしてここに入って来られる?」
 残念なことに、ティンカー・ベルはこのことを説明することができなかった。ティンクもまた、スライトリーの秘密のことは知らなかったのである。しかしフックのつぶやいていた言葉には、疑いの余地はなかった。カップには毒が盛られているのだ。
 「それに、僕は眠ってなんかいなかったよ。」ピーターは、本当に自分の言葉の通りに信じ込んでいるのだった。
 ピーターは、カップを持ち上げた。あれこれ言葉で言うべき時ではなかった。何か行動に移すしかない。閃光のような素早さで、ティンクはピーターの唇の前に飛んでいき、毒薬を最後の一滴まで飲み干したのだった。

 ピーターはいかに確証の乏しいことにおいてさえも、自分自身に対する確信をわずかも失うことはない。事実と想念が未分化のところに存在するのがピーターだからである。この事実は既に何度かこの物語において語られて来た。フックとは対照的な、ピーターの特質をあらわす部分である。

用語メモ
 dregs:ワインの瓶の底に沈んだ澱のことをいう。通常ワインの瓶はこの澱を除くために底が窪んでいる。“drink to the dregs”で“最後の一滴まで飲み干す”という慣用句となる。



◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

◇  教室が決まりました。西館の3Fにある第2コンピュータ室で開催の予定です。コンピュータの使い方をご存じの方は、当日お伝えするユーザー名とパスワードを用いてログインし、インターネットに接続することができます。“Daily Lecture”等の公開中のファイルを開いて、講座のテキストとして御覧になれます。ワードを起動して自分でメモ等を作成することもできます。データ保存のためのフロッピー・ディスクあるいはフラッシュメディアをご持参下さい。
 この機会にコンピュータやインターネットを試してみたいという方は、早めにお出で下されば使い方の説明を致します。

◇第1回目が連休の最中という、大変な日程で組まれていることが分かりました。初回欠席でも、受講には差し障りありません。2回目以降好きな時に出席して頂いて結構です。講座は4回連続ですが、毎回の講義内容は、その場の状況に合わせて随時工夫していく予定ですので、出席は単発でも構わないのです。当日の受講受付もできます。
 コンピュータの利用に親しんでいる方は、テキストを購入しなくても教室でインターネットに繋いで、物語の本文を参照することができます。コンピュータに不馴れな方のためには、書物のテキストを用意してあります。講座は2時から開始ですが、1時頃には講師は来ておりますので、質疑応答等行えます。
 あらかじめ、物語のどの部分を読んでみたいか、あるいはこのお話の解釈について疑問を感じる点等を用意しておいて頂ければ、これに対する解説として講義を行って行きます。
 対訳を作成してありますので、翻訳上の疑問点等をご指摘頂ければ、「意訳」の工夫などを話題にすることもできます。

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

◇“公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm

◇“公開講座9”:自分との共生
ジャンヌ・ダルクの影とナウシカの影 ―神や悪魔として現れるものたち
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/joan/joan.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:アンチ・ファンタシーの中のヒーロー(英雄)―『最後のユニコーン』のアンチ・ロマンス的諧謔性とファンタシー的憧憬”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/antiromance.htm





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