Archive for 21 May 2006

21 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 186


 It was at this moment that Ed Teynte the quartermaster emerged from the forecastle and came along the deck. Now, reader, time what happened by your watch. Peter struck true and deep. John clapped his hands on the ill-fated pirate's mouth to stifle the dying groan. He fell forward. Four boys caught him to prevent the thud. Peter gave the signal, and the carrion was cast overboard. There was a splash, and then silence. How long has it taken?
 "One!" (Slightly had begun to count.)
 None too soon, Peter, every inch of him on tiptoe, vanished into the cabin; for more than one pirate was screwing up his courage to look round. They could hear each other's distressed breathing now, which showed them that the more terrible sound had passed.
 "It's gone, captain," Smee said, wiping off his spectacles. "All's still again."
 Slowly Hook let his head emerge from his ruff, and listened so intently that he could have caught the echo of the tick. There was not a sound, and he drew himself up firmly to his full height.
 "Then here's to Johnny Plank!" he cried brazenly, hating the boys more than ever because they had seen him unbend. He broke into the villainous ditty:

"Yo ho, yo ho, the frisky plank,
You walks along it so,
Till it goes down and you goes down
To Davy Jones below!"

 操舵手のエド・テイントが、船首楼から甲板に出て来たのは、この時であった。さて、読者の方々、ご自分の時計で時を計って頂きたい。ピーターは、深く確かな一撃を与えた。ジョンは、両手で不運な海賊の口を塞いで、彼の口から最期の悲鳴が漏れるのを防いだ。エドは前のめりに倒れた。4人の子供達が彼の体を支え、甲板に音を響かせるのを防いだ。ピーターが合図をすると、死骸は海に投げ込まれた。水音が聞こえ、音はおさまった。ここまでで何分でしょう?
 「一人!」スライトリーが、犠牲者の数を数え始めていた。
 素早く音も立てずに、ピーターは士官用船室に忍び込んだ。一人ならず、勇気を奮い起こして周囲に目を配り始めた海賊が、いたからである。海賊達の耳には、お互いが立てている喘ぎ声が聞こえた。それは、もっと恐ろしい物音が彼等のもとから過ぎ去ったことを示していた。
 「行ってしまいましたぜ、船長。」スミーが、眼鏡を拭いながら言った。「もう何も聞こえません。」
 ゆっくりと、フックは襞襟から頭を覗かせ、じっと耳を澄ませたので、時計の音の木霊ですら聞き取ることができたことだろう。確かに、何の音もしなかった。フックは再び体を伸ばし、立ち上がった。
 「それでは、板歩きの刑だ!」フックは声を張り上げた。先程の無様な姿を子供達に見られて、憎しみの念をかき立てたのだった。海賊の唄が口から漏れて来た。

ヨー、ホー。跳ねる板だぜ。
こいつをお前は歩くのさ。
こいつも、お前も、真っ逆さま
海の悪魔デイビー・ジョーンズにご対面。

 ピーターばかりでなく、ジョンや他の子供達までもが、実際に殺人と遺体の廃棄という兇行に加わっているその有様が、はっきりと描かれている。このような残虐な動作を手慣れた仕草でやってのけることこそが、子供達にとってはとりわけ“格好いい”こととされているのは、言うまでもない。全てが子供達の願望の通りの、スリルに満ちた、そしてまがまがしいお話として進行する。

用語メモ
 forecastle(フォークスル):船の前部甲板の上にある居室部分である。一般水夫が占める場所である。
 cabin(キャビン):船の後部甲板の上にある居室部分である。士官等の上級船員が占める場所である。帆船においては船の背後から風を受けるので、キャビンはフォークスルの風上に位置することになる。船長室は船の後端部に設けられる。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

◇  教室が決まりました。西館の3Fにある第2コンピュータ室で開催の予定です。コンピュータの使い方をご存じの方は、当日お伝えするユーザー名とパスワードを用いてログインし、インターネットに接続することができます。“Daily Lecture”等の公開中のファイルを開いて、講座のテキストとして御覧になれます。ワードを起動して自分でメモ等を作成することもできます。データ保存のためのフロッピー・ディスクあるいはフラッシュメディアをご持参下さい。
 この機会にコンピュータやインターネットを試してみたいという方は、早めにお出で下されば使い方の説明を致します。

◇第1回目が連休の最中という、大変な日程で組まれていることが分かりました。初回欠席でも、受講には差し障りありません。2回目以降好きな時に出席して頂いて結構です。講座は4回連続ですが、毎回の講義内容は、その場の状況に合わせて随時工夫していく予定ですので、出席は単発でも構わないのです。当日の受講受付もできます。
 コンピュータの利用に親しんでいる方は、テキストを購入しなくても教室でインターネットに繋いで、物語の本文を参照することができます。コンピュータに不馴れな方のためには、書物のテキストを用意してあります。講座は2時から開始ですが、1時頃には講師は来ておりますので、質疑応答等行えます。
 あらかじめ、物語のどの部分を読んでみたいか、あるいはこのお話の解釈について疑問を感じる点等を用意しておいて頂ければ、これに対する解説として講義を行って行きます。
 対訳を作成してありますので、翻訳上の疑問点等をご指摘頂ければ、「意訳」の工夫などを話題にすることもできます。

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。
◇18年度開講中の各講座のトピックを開設しました。
 受講生以外の外部の方も御覧になれます。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:ユニバーサル、ユニコーン―『最後のユニコーン』におけるユニコーンの存在論的指標”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/universal.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー(15):レッド・ブル―無知と盲目の影”を新規公開
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/shadow.htm










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