Archive for 24 May 2006

24 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 189


 Hook rallied his dogs with a gesture. "'S'death and odds fish," he thundered, "who is to bring me that doodle-doo?"
 "Wait till Cecco comes out," growled Starkey, and the others took up the cry.
 "I think I heard you volunteer, Starkey," said Hook, purring again.
 "No, by thunder!" Starkey cried.
 "My hook thinks you did," said Hook, crossing to him. "I wonder if it would not be advisable, Starkey, to humour the hook?"
 "I'll swing before I go in there," replied Starkey doggedly, and again he had the support of the crew.
 "Is this mutiny?" asked Hook more pleasantly than ever. "Starkey's ringleader!"
 "Captain, mercy!" Starkey whimpered, all of a tremble now.
 "Shake hands, Starkey," said Hook, proffering his claw.
 Starkey looked round for help, but all deserted him. As he backed up Hook advanced, and now the red spark was in his eye. With a despairing scream the pirate leapt upon Long Tom and precipitated himself into the sea.
 "Four," said Slightly.
 "And now," Hook said courteously, "did any other gentlemen say mutiny?" Seizing a lantern and raising his claw with a menacing gesture, "I'll bring out that doodle-doo myself," he said, and sped into the cabin.
 "Five." How Slightly longed to say it. He wetted his lips to be ready, but Hook came staggering out, without his lantern.

 フックは、手下達に、勇気を奮い出すように呼び掛けた。「さあ、野郎共、怪しい奴を引っ張り出してこい。」轟くような声で怒鳴った。
 「チェッコが戻るまで待って下さい。」スターキーが、うめくように言った。他の海賊達も声を揃えて嘆願した。
 「お前が行くと言うんだな、スターキー。」再び囁くようにフックが言った。
 「とんでもない!」スターキーが叫んだ。
 「この鉤爪は、お前が志願したと言ってるぞ。」フックは、スターキーの方に歩み寄りながら言った。「この鉤爪の機嫌を損ねるのは、利口なことかな?」
 「あそこに飛び込むくらいなら、首を吊られる方がいい。」スターキーは、つっかえながら言った。再び他の海賊達も、彼に声を揃えた。
 「叛乱を起こすというのだな?」よりいっそうほくそ笑むようにして、フックは言った。「スターキーが首謀者だな!」
 「船長、お慈悲を!」スターキーが、鳴き声で言った。体中を奮わせていた。
 「握手だ、スターキー。」フックはこう言いながら、鉤爪を差し伸べた。
 スターキーは、助けを求めて後ろを振り向いた。しかし助けてくれる者は誰もいなかった。スターキーが後じさりするにつれ、フックが間を詰めた。フックの目には、赤い光が浮かんでいた。絶望の叫びをあげて、スターキーは大砲の上に飛び乗り、まっ逆さまに海に飛び込んだ。
 「4人目。」スライトリーが言った。
 「さて、誰か他に謀反を企てようというお方はおいでかな?」丁寧な口調でフックが言った。ランプを手に取り、鉤爪を突き出して恐ろし気な姿勢をとった。「では、この俺が奴を引きづり出してやろう。」こう言うと、フックはキャビンに飛び込んだ。
 「5人目。」スライトリーは、この言葉を言いたくてたまらず、唇を湿していた。しかしフックはよろめきながら姿を現した。ランプは取り落としていた。

 手下の海賊達を次々と破滅に追いやり、自らの滅亡を早めているフックの行動は、直接その手を下しているピーターの行動と、見事に同調するものである。フックの精神を支配していたものは、自らの不利益を好んで選びとっていく、天の邪鬼(imp of the perverse)以外の何物でもない。

用語メモ
 天の邪鬼:心の願望の逆を常に実行しようとする衝動であり、本体の意志に逆らって常に反発する行動を示す、影のような分身のことでもある。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

◇  教室が決まりました。西館の3Fにある第2コンピュータ室で開催の予定です。コンピュータの使い方をご存じの方は、当日お伝えするユーザー名とパスワードを用いてログインし、インターネットに接続することができます。“Daily Lecture”等の公開中のファイルを開いて、講座のテキストとして御覧になれます。ワードを起動して自分でメモ等を作成することもできます。データ保存のためのフロッピー・ディスクあるいはフラッシュメディアをご持参下さい。
 この機会にコンピュータやインターネットを試してみたいという方は、早めにお出で下されば使い方の説明を致します。

◇第1回目が連休の最中という、大変な日程で組まれていることが分かりました。初回欠席でも、受講には差し障りありません。2回目以降好きな時に出席して頂いて結構です。講座は4回連続ですが、毎回の講義内容は、その場の状況に合わせて随時工夫していく予定ですので、出席は単発でも構わないのです。当日の受講受付もできます。
 コンピュータの利用に親しんでいる方は、テキストを購入しなくても教室でインターネットに繋いで、物語の本文を参照することができます。コンピュータに不馴れな方のためには、書物のテキストを用意してあります。講座は2時から開始ですが、1時頃には講師は来ておりますので、質疑応答等行えます。
 あらかじめ、物語のどの部分を読んでみたいか、あるいはこのお話の解釈について疑問を感じる点等を用意しておいて頂ければ、これに対する解説として講義を行って行きます。
 対訳を作成してありますので、翻訳上の疑問点等をご指摘頂ければ、「意訳」の工夫などを話題にすることもできます。

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。
◇18年度開講中の各講座のトピックを開設しました。
 受講生以外の外部の方も御覧になれます。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:ユニバーサル、ユニコーン―『最後のユニコーン』におけるユニコーンの存在論的指標”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/universal.htm

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー(15):レッド・ブル―無知と盲目の影”を新規公開
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/shadow.htm



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