Archive for 28 May 2006

28 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 193


 I think all were gone when a group of savage boys surrounded Hook, who seemed to have a charmed life, as he kept them at bay in that circle of fire. They had done for his dogs, but this man alone seemed to be a match for them all. Again and again they closed upon him, and again and again he hewed a clear space. He had lifted up one boy with his hook, and was using him as a buckler, when another, who had just passed his sword through Mullins, sprang into the fray.
 "Put up your swords, boys," cried the newcomer, "this man is mine."
 Thus suddenly Hook found himself face to face with Peter. The others drew back and formed a ring around them.
 For long the two enemies looked at one another, Hook shuddering slightly, and Peter with the strange smile upon his face.
 "So, Pan," said Hook at last, "this is all your doing."
 "Ay, James Hook," came the stern answer, "it is all my doing."
 "Proud and insolent youth," said Hook, "prepare to meet thy doom."
 "Dark and sinister man," Peter answered, " have at thee."

 残虐な子供達の一隊がフックを取り囲んだ時、手下達の全てが既に倒されていたと思われる。しかし、燃え盛る火のように激しい攻撃にさらされてこれに抗うことのできるフックには、魔法の力でもかかっているようだった。子供達は、他の海賊達は片付けることができたものの、この男だけは一人で彼等全員を相手にすることができていた。幾度となく子供達はフックに攻め寄ったが、その度毎にフックは包囲を切り抜けてみせた。フックは、子供の一人を鉤爪に引っ掛けて持ち上げ、あたかも盾のように用いていた。その時、もう一人の少年がムリンズの体を剣で貫くと、この乱闘の中に飛び込んできた。
 「君達、剣を引くんだ。」この少年は言った。「こいつは、僕の獲物だ。」
 こうしていきなり、フックは目の前にピーターが現われたのに気付いた。他の子供達は身を引いて、二人の周りに円陣を組んで取り囲んだ。
 長い間、二人の敵は互いの顔を見つめ合っていた。フックは、わずかに体を震わせていた。ピーターは、不思議な微笑みを顔に浮かべていた。
 「そうか、パン。」ようやくフックは口を開いた。「全てお前の仕業だったのだな。」
 「その通りだ。ジェイムズ・フック。」厳しい声で、答えが返って来た。「みんな、僕がやったことだ。」
 「傲慢な礼儀知らずの若造め。覚悟しろ。」フックは言った。
 「悪党め、必ずお前を倒してやる。」ピーターが答えた。

 勇壮な冒険のクライマックスを彩る、華々しい対決のシーンである。読者は残酷な惨劇を期待する、血に餓えた観衆の一人としてこの場面の目撃者となることを要請されている。この流血を特有の美学としてことさらに評価する、子供達の情けを知らぬ期待感が、全てを具現化させているのである。

用語メモ
 buckler:中世の時代に用いられた円形の盾である。敵の子供の体を立て代りに使ったというのだから、凄まじい戦い振りである。当然その子供は命を失うか、重傷を負った筈であろう。



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