Archive for 05 May 2006

05 May

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 170


 The moon was riding in a cloudy heaven when Peter rose from his tree, begirt with weapons and wearing little else, to set out upon his perilous quest. It was not such a night as he would have chosen. He had hoped to fly, keeping not far from the ground so that nothing unwonted should escape his eyes; but in that fitful light to have flown low would have meant trailing his shadow through the trees, thus disturbing birds and acquainting a watchful foe that he was astir.
 He regretted now that he had given the birds of the island such strange names that they are very wild and difficult of approach.

 ピーターが、危険な冒険に出撃するために武器を身にまとい、他のものは捨てて自分の木から姿をあらわした時、月は雲のかかった夜空を泳いでいた。それは、ピーターが望んでいたような夜ではなかった。ピーターは、少しでも普段と異なるものがあれば目を留められるように、地面からさほど離れていない高さを飛んで行きたいと考えていた。しかし、この落ち着かない月の光りの中で飛んで行けば、木々の間に影を引きずって鳥達を怯えさせてしまい、警戒している敵に彼の接近を悟られてしまうことになるだろう。
 今ピーターは、この島の鳥達に野性的で近付くことが困難な奇妙な名前を与えてしまったことを後悔していた。

 ネバーランドは、ピーターと子供達の冒険を最高に楽しくするための世界なので、そこには平和や安寧ではなく常に危険と不和が満ち溢れている。さらにここでは、この島に生息する生物達の命名者としてピーターが振る舞い、この世界の全てを実際に創造したことが暗示されている。メイク・ビリーブの特権的行使者としてピーターは思念を実体化させ、思うがままに世界を構築することができる。しかしここにあるように自らの願望が一人歩きを始め、実際に本人の不利益を招き、時には危機に陥れることさえあり得るのである。さらにこの事実がピーターと彼の影を対象としてもの語られていること自体が、作者の巧妙な擬装の結果なのである。

用語メモ
 命名(nomination):名前を与えることとは概念を形成することであり、形質を賦与することである。事物の実相を反映する名前が言葉として存在し、その本性が本来の名前の裡に反映されている筈であると考えるのが、古代人の世界観をなしていた全体性の思想であった。




◆和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

◇  教室が決まりました。西館の3Fにある第2コンピュータ室で開催の予定です。コンピュータの使い方をご存じの方は、当日お伝えするユーザー名とパスワードを用いてログインし、インターネットに接続することができます。“Daily Lecture”等の公開中のファイルを開いて、講座のテキストとして御覧になれます。ワードを起動して自分でメモ等を作成することもできます。データ保存のためのフロッピー・ディスクあるいはフラッシュメディアをご持参下さい。
 この機会にコンピュータやインターネットを試してみたいという方は、早めにお出で下されば使い方の説明を致します。

◇第1回目が連休の最中という、大変な日程で組まれていることが分かりました。初回欠席でも、受講には差し障りありません。2回目以降好きな時に出席して頂いて結構です。講座は4回連続ですが、毎回の講義内容は、その場の状況に合わせて随時工夫していく予定ですので、出席は単発でも構わないのです。当日の受講受付もできます。
 コンピュータの利用に親しんでいる方は、テキストを購入しなくても教室でインターネットに繋いで、物語の本文を参照することができます。コンピュータに不馴れな方のためには、書物のテキストを用意してあります。講座は2時から開始ですが、1時頃には講師は来ておりますので、質疑応答等行えます。
 あらかじめ、物語のどの部分を読んでみたいか、あるいはこのお話の解釈について疑問を感じる点等を用意しておいて頂ければ、これに対する解説として講義を行って行きます。
 対訳を作成してありますので、翻訳上の疑問点等をご指摘頂ければ、「意訳」の工夫などを話題にすることもできます。

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◇内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



◆「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◇「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◇アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◇ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。
◇18年度開講中の各講座のトピックを開設しました。
 受講生以外の外部の方も御覧になれます。


http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



◆メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

◇論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシーII:ユニバーサル、ユニコーン―『最後のユニコーン』におけるユニコーンの存在論的指標”を新規公開中
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/anti/universal.htm





00:00:00 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks