Archive for 13 June 2006

13 June

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 209


 Wendy and John had been taken aback somewhat at finding their father in the kennel.
 "Surely," said John, like one who had lost faith in his memory, "he used not to sleep in the kennel?"
 "John," Wendy said falteringly, "perhaps we don't remember the old life as well as we thought we did."
 A chill fell upon them; and serve them right.
 "It is very careless of mother," said that young scoundrel John, "not to be here when we come back."
 It was then that Mrs. Darling began playing again.
 "It's mother!" cried Wendy, peeping.
 "So it is!" said John.
 "Then are you not really our mother, Wendy?" asked Michael, who was surely sleepy.
 "Oh dear!" exclaimed Wendy, with her first real twinge of remorse, "it was quite time we came back,"
 "Let us creep in," John suggested, "and put our hands over her eyes."
 But Wendy, who saw that they must break the joyous news more gently, had a better plan.
 "Let us all slip into our beds, and be there when she comes in, just as if we had never been away."

 ウェンディとジョンは、お父さんが犬小屋の中にいるのを知って、気を呑まれていた。
 「確かお父さんは、」ジョンは、自分の記憶に確信が持てないという様子で言った。「犬小屋の中でなんか寝てなかったよね。」
 「ジョン、」ウェンディは、つっかえながら答えた。「私たちは、以前のことを自分で思ってる程よく覚えてはいないのかもしれないわ。」
 二人の背中を、冷たいものが走った。いい気味というものだ。
 「お母さんは、随分不注意だな。」人でなしのジョンが言った。「僕らが帰ってきたというのに、ここにいないなんて。」
 その時だった、ダーリング夫人が再びピアノを弾き始めたのは。
 「お母さんだわ。」子供部屋を覗きこんで、ウェンディが言った。
 「本当だ!」ジョンも言った。
 「じゃあ、ウェンディは、本当のお母さんじゃなかったの?」マイケルが、尋ねた。もう、眠気に負けそうになっていたのだ。
 「本当に、もっと早く帰ってなきゃ、いけなかったんだわ。」ウェンディが、初めて後悔のために胸に痛みを覚えて叫んだ。
 「そっと入っていって、後ろから目をふさいでやろう。」ジョンが提案した。
 しかしウエンディには、この知らせをもっと優しく告げた方がよいと分かっていたので、別な考えがあった。
 「みんなでベッドにもぐり込んで、そのままお母さんがやってくるのを待っているのよ。私たちが、逃げ出したりなんかしていなかったみたいにね。」

 身勝手で恩知らずな、子供達の正体が見事に暴かれる帰宅後の様子である。

用語メモ
 scoundrel:“悪党”、“悪漢”、“無頼漢”、“ならず者”等に訳される、碌でもない人間である。形容詞ならば“ふらちな”、“破廉恥な”等と訳される人非人に関する属辞である。子供というものの正体に他ならない。




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