Archive for 15 June 2006

15 June

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 211


Chapter 17
WHEN WENDY GREW UP

 I hope you want to know what became of the other boys. They were waiting below to give Wendy time to explain about them; and when they had counted five hundred they went up. They went up by the stair, because they thought this would make a better impression. They stood in a row in front of Mrs. Darling, with their hats off, and wishing they were not wearing their pirate clothes. They said nothing, but their eyes asked her to have them. They ought to have looked at Mr. Darling also, but they forgot about him.
 Of course Mrs. Darling said at once that she would have them; but Mr. Darling was curiously depressed, and they saw that he considered six a rather large number.
 "I must say, he said to Wendy, "that you don't do things by halves." a grudging remark which the twins thought was pointed at them.
 The first twin was the proud one, and he asked, flushing, "Do you think we should be too much of a handful, sir? Because, if so, we can go away."
 "Father!" Wendy cried, shocked; but still the cloud was on him. He knew he was behaving unworthily, but he could not help it.

 他の子供達がどうなったのか、知りたいと思われることだろう。彼等は階下で、ウェンディが彼等のことを話してくれるのを待っていたのであった。階下で五百数えてから、彼等も二階に上がってきた。上がるには、階段を用いることにした。この方がより良い印象を与えると判断したからだ。彼等は帽子をとり、一列になって、ダーリング夫人の前に並んだ。この時ばかりは、海賊の衣服を身に着けていなければ良かったと後悔した。何も口には出して言わなかったが、彼等の目がこの家に引き取って欲しいと訴えていた。彼等は、ダーリング氏の方にも同じような視線を向けていなければならない筈であった。しかし、子供達はダーリング氏のことはきれいさっぱり忘れていたのだ。
 勿論ダーリング夫人は、彼等を引き取ってあげようと即座に答えた。しかしダーリング氏が、奇妙に打ちひしがれたような表情に見えた。そして6人の子供達というのは、いささか大勢過ぎると彼が考えているらしいことが、子供達にも分かった。
 「あのね、」ダーリング氏は、ウェンディに語りかけた。「物事は中途半端にやる訳にはいかないだろう。」この物惜しみするような言葉は、双子達には自分たちに向けられているように感じられた。
 双子の兄の方は、気位が高い質だった。彼は顔を紅潮させて言った。「僕らは手が掛かりすぎるとでもおっしゃるんですか?そういうことなら、出て行きますけど。」
 「お父さん!」ウェンディは心を痛めて叫んだ。しかしまだダーリング氏の表情は曇ったままだった。彼はあまり立派な振る舞いをできていないことを自覚していた。しかしどうしようも無かった。

 物事は、お話の中のようにいつもうまく進行するとは限らない。必ず何か、心のわだかまりになるような障害が待ち受けていて、愉快な気持ちになることを妨げてしまう。このような部分こそ、現実というものを特徴的づけている固有の要素なのである。妥協を知らない子供達の性急な精神は、現実世界のこのような側面に極めて敏感である。

用語メモ
 現実(reality):整然としたまとまりの良いお話を形成するには、不純な夾雑物的要素を多く含み過ぎた、出来損ないのお話のことである。
 “by halves”:“中途半端に”、“いい加減に”の意である。双子は“半分ずつ”と聞き取ったのかもしれない。




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