Archive for 22 June 2006

22 June

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 218


 Peter came next spring cleaning; and the strange thing was that he never knew he had missed a year.
 That was the last time the girl Wendy ever saw him. For a little longer she tried for his sake not to have growing pains; and she felt she was untrue to him when she got a prize for general knowledge. But the years came and went without bringing the careless boy; and when they met again Wendy was a married woman, and Peter was no more to her than a little dust in the box in which she had kept her toys. Wendy was grown up. You need not be sorry for her. She was one of the kind that likes to grow up. In the end she grew up of her own free will a day quicker than other girls.
 All the boys were grown up and done for by this time; so it is scarcely worth while saying anything more about them. You may see the twins and Nibs and Curly any day going to an office, each carrying a little bag and an umbrella. Michael is an engine-driver. Slightly married a lady of title, and so he became a lord. You see that judge in a wig coming out at the iron door? That used to be Tootles. The bearded man who doesn't know any story to tell his children was once John.

 ピーターは、次の年の春の大掃除には姿を現した。不思議だったのは、彼が昨年はやって来なかったことに気付いていないことだった。
 ウェンディが少女時代にピーターと出会ったのは、これが最後となった。ウェンディは、ピーターのためにもう少しだけ成長するのを急ぐことを控えようとした。常識試験で優等をとった時などは、何かピーターを裏切ってしまったような気持ちになってしまったものだった。しかし、この気ままな少年が姿を現すことのないまま、月日は過ぎて行った。そして次に彼等が出会った時には、ウェンディはもう結婚していた。そしてウェンディにとってピーターの思い出は、子供の頃におもちゃをしまっていた箱の中の、埃くずのようなものでしかなくなっていた。ウェンディは成長したのだ。彼女のことを気の毒に思う必要もない。ウェンディは、大きくなることが嫌いでない類いの女の子だった。結局は他の女の子達よりも幾分早く、自分から進んで大人になったのだった。
 この頃にはもう、他の男の子達もみんな救いようのない大人になっていた。だからこれ以上語るべきことは何もない。双子もニブズもカーリーも、鞄と傘を持って仕事に出かける姿を何時だって見ることができる。マイケルは、車の運転手になった。スライトリーは称号を持った奥方と結婚し、今は貴族だ。鉄製の扉の前に、鬘を被った裁判官様の姿が見えるだろうか?あれは以前トゥートゥルズだったお方だ。子供に何一つお話をしてやることもできない、髭を生やしたあの紳士は、以前ジョンだったお人だ。

 現実社会に戻り、大人になってしまったもの達のことを語る作者の言葉は、皮肉たっぷりである。夢の世界の暗黒面を冷笑的に語った筆致は、現実世界を語る際にはさらに素っ気ない。

用語メモ
 a lady of title:貴族の称号を持った貴婦人。当の女性が貴族奥方としての称号を持つばかりでなく、結婚した相手の男性も貴族として遇されるのである。




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