Archive for 24 January 2011

24 January

映画『闇のバイブル』研究 7

 ヴァレリエはお祖母様の言いつけに従い、芸人達のパレードを先導してきたオルリークに窓から籠を降ろして花を渡す。するとオルリークは今度は、代わりに一通の手紙を籠に入れて戻してくれるのである。ヴァレリエは再び温室で、あぶり出しを用いてオルリークから受け取った手紙の内緒の文面を読み取る。


 そこで唐突に挿入されるのが、鶏を襲う鼬のシーンである。若者が銃で鼬に狙いをつけているが、ヴァレリエは鼬を見逃してくれるように懇願している。


そこに一見脈絡無く映し出される、野原の中を逃げて行く黒衣の者の姿がある。ヴァレリエの絶叫と共に、黒衣の者は草原の中に倒れ臥す。前回のターンでヴァレリエが演じていた草原の逃走のシーンは、今回はリヒャルドに該当する人物が受け持つことになっているようでもある。


次のシーンでは、何故かヴァレリエは撃ち殺された鼬の死骸からイヤリングを外して手に取ろうとしている。


そこに館の下女が、お祖母様が病に倒れたことを知らせに来る。ヴァレリエが館に戻ると、お祖母様は自室で床に臥している。するとお祖母様に心配そうに声をかけながら、ヴァレリエは狡猾にその耳からイヤリングを外すのである。お祖母様の部屋の背後の壁には、お父様の肖像画がかけられている。お祖母様は手鏡に自分の顔を映して耳飾りが失われたことに気付くが、手に取った手鏡の裏には、温室にあった蜜蜂の巣の木像にあったのと同様の浮き彫りが施されているのが何やら暗示的である。


その時、館の中庭に御者の乗っていない二頭立ての馬車が乗り入れてくる。この事実を告げられると、お婆様はこれまでヴァレリエに隠されていた過去の秘密と、不思議な予言を暴く告白をしてこと切れる。


お祖母様の死を待ち受けていたかのように館に乗り入れてきた馬車には、壁に掛かっていた肖像画にあった通りのお母様とお父様の姿がある。


 ヴァレリエは遂に館に戻ってきたお母様とお父様を迎え入れる。しかしヴァレリエを抱き留めたお母様は、何故か曰くあり気に視線を横に移しているのである。壁にかけられた鼬の死骸の傍らに、オルリークの姿も見えるが、オルリークは指を口に当てて、ヴァレリエに何かを告げようとしているようにも思われる。


 ヴァレリエを抱き留めたお父様も、お母様の場合と同様に曰くあり気な怪しい視線を他所に向けているのである。そのお父様の視線の先には何故か、壁にかけられた鼬の死骸がある。


お母様とお父様は、ヴァレリエの目を盗んでやはり怪しい目配せを交わしあっているのであった。


ヴァレリエは、両親の示す不審な動作に何も気付くことなく、耳飾りをお母様の耳にかけてあげる。


 そこに喪服に身を包んだお祖母様が、オルリークに支えられて館から出てくる。先ほどベッドで事切れた筈のお祖母様が、何事も無かったように館から姿を現すのである。お祖母様は、ヴァレリエの両親を迎え入れ、お母様と口付けを交わしながら、ヴァレリエがかけてあげたお母様の耳元の耳飾りに目を留める。それからお祖母様は一瞬お母様の首を絞めようとするのだが、何故か突然動作を思い止まるのである。従姉のエルサがヴァレリエに対して行った攻撃の試みとその放棄の動作が、形を変えてここで反復されているのである。それと同時に、何故か壁にかけられた鼬の死骸に耳飾りが移動している。

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