Archive for February 2018

26 February

トークショップ開催報告

研究推進委員会の設立


2月25日、和洋女子大学国際学類の主催でイオンタウンユーカリが丘で行われたトークショップでは、様々な資料をお持ちより頂き、Topcraft 社のアニメ The Last Unicorn に対する理解を深めることができました。これらの貴重な資料をアーカイブとして整理して、保管と展示の双方を効果的に進めていくための具体的な打ち合わせを行いました。ヴィデオテープ版、LD版、DVD版、blu ray 版などかなりのヴァージョンが存在しますが、未だ日本対応のディスクのリリースはなされていないのです。


セル画や絵コンテ等の、このアニメ作品の研究の足がかりとなる資料の保存を図ると共に、これらの効果的な活用を行うための「ビーグル、トップクラフト研究推進委員会」を、この会合で設立することができました。


和洋女子大学の文化企画事業との連動


今後は和洋女子大学の学術研究並びに地域貢献の双方に関わる文化企画と様々の形で連繋して、「ビーグル、トップクラフト研究推進委員会」の活動が行われていく予定です。興味をお持ちの方は、以下のアドレスにご連絡ください。


kuroda@wayo.ac.jp
21:24:07 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

イオンタウン展示 コミュニケーションノートのご質問

展示物と講演会の内容について質問を頂いていました。
お答えします。

1 展示されていたグラフィックノベルは、Topcraft 社の The Last Unicorn のものとはかなり画風が異なりますが?

お答え
随分違う雰囲気になっていますが。アメリカで販売されているライセンス許諾付きの正規品です。しかし最近の製品なので、Topcraft 社の面影は全くありません。日本の漫画家に改めて描き直してもらいたいものですね。

2 アリスやシェイクスピアなどの引用があるのは、どのような意図があるのでしょうか?

お答え
こうした隠れた遊戯的記述は、作者の遊びでもあり読者の喜びでもあります。文学作品だけでなく、アニメや映画にもよく導入されているものです。しかし主題的には、意識の奥底を通じて時間と空間の隔たりに関わりなく世界の全てが繋がっているという、The Last Unicorn の世界観を表現する優れた技法と考えられます。宇宙の全てが、各々の個物を認識しそれぞれの存在と全体との関連を把握する意識の力が備える、「意味を作り出す力」によって密接な関係で結びつけられていると考えられます。

3 アニメ The Last Unicorn では、ユニコーンがとても女性的に描かれていましたが?

お答え
神話や伝説を通じて語り伝えられているユニコーンは、いかにも男性的なイメージです。お城のタペストリーに描かれていた姿に、それがうかがえました。The Last Unicorn では、人々が信じてきたそのユニコーン像は偽りのものとして否定されることになっています。
ユニコーンを雌として描く試みは、常識をひっくり返す大胆な行為だったわけです。


4 アニメ「ガンダム」にも「貴婦人とユニコーン」のタペストリーが出てきますが、ユニコーンとタペストリーの関係は?

お答え
我々が知っているユニコーン像は、パリのクリュニー美術館やニューヨークのメトロポリタン美術館等に保管されたタペストリーを通じて伝えられたものです。ユニコーンを語る情報の出典が、タペストリーなのです。ユニコーンと言えば、すぐさまタペストリーが思い浮かべられる訳です。
20:51:35 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

25 February

トークショップへのメッセージ

カナダ、UCN大学のスー=マシソン氏からトークショップ開催に際し次のメッセージをお寄せ頂きました。

I would very much like to congratulate your roundtable's activities and encourage your establishment of the committee of Beagle-Topcraft Research Promotion. Beagle is an important fantasy author whose work offers us all opportunities to consider important and necessary philosophic questions. Topcraft's film adaptation of The Last Unicorn is a vital cultural intersection for Japanese and American audiences. The release of a Japanese version animation disk of The Last Unicorn would be the next step forward, one that would further foster what has become a popular and important trans-Pacific relationship. The realization of such a disk would be an important cultural event in Japan and in the United States (and Canada). If there is anything I can do to further this project please do not hesitate to let me know. If you would like me to join you on the committee, I would be most honored.

マシソン氏は様々の分野に渡って研究と教育活動を展開しておいでです。ビーグルの作品をことに高く評価してトップクラフト社に関する研究の重要性もよくご存知です。是非我々の委員会に参加したいと、現在の活動状況をお知らせ下さいました。以下は研究業績の紹介文の一部です。

Sue Matheson is an Associate Professor of English Literature at the University College of the North. Her teaching portfolio encompasses a wide range of courses in the areas of American Literature, Film and Popular Culture, British Literature, Canadian literature, Aboriginal and Indigenous Literatures, and Children’s literature. Western film, and Horror Film are among her research specializations. Peter S. Beagle’s The Last Unicorn is used as a standard text in her Children’s literature classes. She is keenly interested in all of Beagle’s works, and in particular, his use of language and his framing of the metaphysical. Her article, “Psychic Transformation and the Regeneration of Language in Peter S. Beagle’s The Last Unicorn,” reads The Last Unicorn as a self-reflexive, complex re-visioning of the fairy tale that is concerned with the regeneration of meaningful language and the process of psychic transformation.
05:11:46 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

23 February

イオンタウン講演会

レッドブルとユニコーンー申命記の記載

欽定訳聖書では、人々を追い立てていったのはユニコーンだったと書かれている



 最初にこの不可思議な怪獣の名が語られたのは、物語の冒頭あたり、これまで長い間自分の守ってきた常春の森を離れて、外の世界へと旅立ったばかりのユニコーンが路上で出会った、意味なく歌を口ずさむことしか知らない、気の触れたような蝶によってだった(1)。ユニコーンの尋ねた質問をはぐらかすように、とりとめの無い戯言を延々と繰り返した後に、漸く彼は先程尋ねられたユニコーンの問いに答えるかのごとく、遠い昔に世界のあらゆるところから失われてしまった他のユニコーン達の消息と、その運命的な事件に関与したというレッド・ブルという不可思議な存在について語ったのである。

You can find your people if you are brave. They passed down all the roads long ago, and the Red Bull ran close behind them and covered their footprints.
p. 15

勇気を失うことが無ければ、失われた仲間達を見つけ出すことができます。彼等は遠い昔に世界のあらゆる道を駆け去り、その後をレッド・ブルが追って、彼等の足跡を消し去ってしまったのです。

しかしこの風のように希薄で極楽蜻蛉そのもののように脳天気な蝶は、助言者としてはいささか当てにならない、むしろはなはだ頼りないと言うべき軽佻浮薄な情報提供者なのである。何故ならば、“レッド・ブル”という始めて耳にする名について、改めて尋ねたユニコーンに対する蝶の答えは、以下のようなものであったからだ。

“His firstling bull has majesty, and his horns are the horns of a wild ox. With them he shall push the peoples, all of them, to the ends of the earth.”
p. 15

「彼の第一子は王となり、その角は野牛の角。これを用いて牡牛は、全ての民を地の果てまで追いやるであろう。」

 実は彼のこの言葉もやはり、ユニコーンの問いに答えて語ったものとは、必ずしも言い難いものなのだ。これはひょっとしたら、旧約聖書の一つ「申命記」(Deuteronomy)33章17節に、エジプトを脱出したモーセに対して神によってなされた予言として記載されている言葉の、あるがままの引用に過ぎないものであるかもしれないからである。


ユニコーンとレッドブルの交換記述あるいは同一性を暗示する要素については、『アンチファンタシーというファンタシー2』の第7章「レッド・ブル―無知と盲目の影」に掘り下げた考察があります。

以下のリンクでも確認できます。
https://www.academia.edu/7899655/Red_Bull_The_Shadow_of_Ignorance_and_Blindness
23:25:03 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

トークショップへのメッセージ

アメリカ、ロサンジェルスのユング研究所のジョン=レイニアード氏から、トークショップ開催に際して次のメッセージをお寄せ頂きました。

I am a Jungian psychoanalyst in the Los Angeles area. I’ve been a fan of Japanese anime and manga for around two decades now. I’ve published one paper on the Full Metal Alchemist series in a Jungian journal and I’ve given talks about the deep psychological value of anime. Much of anime and manga that is produced in Japan is still close to the imagination, the spontaneity is still there and so the voice of the collective unconscious is strong. Anime carries images that compensate the stale patriarchal attitudes of the collective. The warmth of feeling in anime, the focus on personal suffering and the healing of relationships, more than heroic action, provides a tonic for our obsessive and anxious times. Anime often show how a relationship to an alien other, god or space being, can be healing for both (The Ancient Magus Bride comes to mind).

I support any effort such as you are taking on if it widens the acceptance and experience of this incredible and vital stream of living water.

John Ranyard, MA


レイニアード氏は日本のアニメ文化に対する造詣が深く、様々なアニメ作品の中に潜む深層心理学的な重要主題を指摘して下さっています。昨年度は和洋女子大学を来訪して下さり、「特別講義」を開催してアニメ文化とユング心理学の興味深い関連を語って下さいました。


2016年10月31日に行われたレイニアード氏の特別講義の内容については、以下のリンクに講義資料と関連データが公開されています。
antifantasy2.blog01.linkclub.jp/index.php?blogid=1214&archive=2016-10-11
13:36:07 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks