Complete text -- "The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 410"

14 November

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 410


"I have been mortal, and some part of me is mortal yet. I am full of tears and hunger and the fear of death, though I cannot weep, and I want nothing, and I cannot die. I am not like the others now, for no unicorn was ever born who could regret, but I do. I regret."

「私はいったん死すべきものとなってしまいました。そのために私の一部は、いまだに死すべきものの感覚を覚えてしまっているのです。私の心は今、涙と渇望と死に対する恐怖に満ちています。私は泣くこともできず、欲するものもなく、死ぬこともできないのに。私は他のユニコーン達とは異なるものになってしまいました。後悔の念を抱くことのできるユニコーンなど、かつてこの世に生まれたことは無かったのです。でも私は今、悔恨の気持ちを知っています。」

 “regret”という本来immortalな存在の知る由もないものであった感覚を、このユニコーンが覚えるようになってしまったのである。このお伽話はユニコーンとその連れがハガードとレッド・ブルという悪漢を打ち倒すロマンス的物語などではなく、世界にユニコーンが満ち溢れる至福の様が描かれる喜劇でもなく、一頭のユニコーンがかつてないおぞましい変化を被る結果を描いた、苦い味わいを持ったアンチ・ファンタシーなのである。

用語メモ
 キーワード(key words):The Last Unicorn という物語の思弁的な意味性を構築する軸となる観念がここに列挙されている。すなわち“mortal”、“hungar”、“regret”等である。これらと他のいくつかのキーワードが相互に密接な関連を持って、独特の観念空間を展開しているのである。

お願い
 “『最後のユニコーン』読解メモ”は、第412回をもって終了の予定です。
 これまで解説されていた部分についての疑問、あるいは言及されていなかった箇所についての質問等がありましたら、どうかお知らせ下さい。総集編で補完したいと思います。その他リクエスト等ありましたらご遠慮なくお寄せ下さい。


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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中

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