Archive for 06 March 2005
06 March
The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 157
"As I say, you satisfy custom. You don"t satisfy my father, but then neither do I. That would take a unicorn."
「君はね、しきたりは満足させたのさ。でも僕の父上を満足させることはできない。僕もやっぱりだめだけどね。あの人を満足させるには、ユニコーンが必要だ。」
ユニコーンを呼び出す行為に何の意義も認めず、ユニコーンが現れることを全く期待してもいない王子様がお姫様をなだめて言う言葉である。さりげなくここで語られている王子様の父親が、後に重要な役割を担って登場することになるハガード王なのである。純正の本物以外に心を満足させるものを持たない、厳格なストイシズムの持主としてハガード王が言及されている。彼の美学的にあまりにも峻厳な自意識は、『ピーターとウェンディ』のフックの心性と重なり合うものである。
用語メモ
ストイシズム(stoicism):全ての欲望を抹消しようと欲する禁欲主義であるストイシズムは、能う限りの全てのものを手に入れようとする貪欲と反転的に連接するものとなる。
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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)
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