Archive for 18 March 2005

18 March

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 169


"I'm no man," he said, "I'm a magician with no magic, and that's no one at all."

「私は何物でもない。」シュメンドリックは言いました。「私は魔法の力を持たない魔法使いだ。それは誰でもない、ということだ。」

「誰にも行うことが不可能である」とされていた筈のことが “no man”によって成し遂げられる、という筋立ては、英語世界の“nobody”、ドイツ語世界の“Niemand”ギリシア世界の“ウーティス”等の伝説上の超現実的存在として、あるいは契約と予言に関わる条件の転覆行為のために活用されたペテン的言説として、様々な謎を主題とした物語の格好の題材となってきた。
 「非在」という属性のために、あるいは全くの不能性という特殊な能力のおかげで、ある種の全能性を発揮することができるという上のメタ論理は、論理矛盾と公理系の基本原則の破壊を通して不可能事の顕現の様を描こうとする、ファンタシーの文法の特異性を際立たせるものであろう。

用語メモ
 非在(nonexistence):“非在”という属性は欠如あるいは空隙としてのみならず、時として相反する属性記述の併記という論理矛盾、不可能性から導き出されることもある。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス
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