Archive for 02 March 2005

02 March

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 153


"I smelled them," the first man was saying. "Eyes are easy to deceive, and cheats by nature, but surely no shadow has a smell?"

「俺は確かに匂いまで感じたんだ。」一人の男が言いました。「人間の目はだまされることがある。視覚はもともと錯覚を与えやすいものだ。けれどただの影には匂いなんてないだろう。」

 先程シュメンドリックが魔法の力で呼び出したロビン・フッドの幻影の後を追っていった、カリーの手下の男達が交わす会話である。彼等は知覚による現象把握と事物の真実の姿である実在の乖離を意識しているのである。
 五感の中でいずれの感覚が最も高貴で優れたものか、あるいはそれぞれの長所と欠点は、等については古来より様々の論議がなされている。

用語メモ
 不可知論(agnosticism):意識の主体である我々は感覚を通してしか事物を把握することができない。五感に分類される知覚に掬いあげられない実体は感知されることはないし、存在そのものを直覚として理解する術はないのである。真の実在の感知の可能性の有無と、その存在自体の是非についてなされた議論が不可知論である。


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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)


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