Archive for 03 March 2005

03 March

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 154


"The eyes are perjurors, right enough," grunted the second man, who seemed to be wearing a swamp. "But do you truly trust the testimony of your ears, of your nose, of the root of your tongue? Not I, my friend. The universe lies to our senses, and they lie to us, and how can we ourselves be anything but liars? For myself, I trust neither message nor messenger; neither what I am told, nor what I see. There may be truth somewhere, but it never gets down to me."

「確かに目は我々を裏切る。」体一面沼の泥だらけのようなもう一人の男が答えました。「だがお前は本当に自分の耳や、鼻や、舌の与える感覚を信じることができるのか?俺は信じないぞ。世界全体が俺たちの感覚を騙そうとしているんだ。俺たちは自分の感覚に騙されているんだ。俺たち自身だって嘘つき以外の何物にもなれはしない。俺はな、伝えられた知らせも、知らせを伝えるものも信じられない。語られた言葉も、目に見たものも信じられない。どこかに真実なんてものがあったところで、その真実は俺のところまでやってきてくれることはないのさ。」

 現実の理想からの乖離を強く意識した言葉として、この物語の中心的主題を反映する部分であろう。キーワード“reality”と関連する。
 意識の主体を取り巻く外界が、真実を隠蔽する敵対的なものである、というのは、不可知論(agnosticism)という言葉の起源となった“グノーシス思想”(Gnosis)の思想的特徴であると言われる。

用語メモ
 グノーシス思想:世界の創世を司り、世界を支配している神自身が、意識の主体である人間に対して敵対的な存在であるとする思想である。霊性を迷妄に導く知覚の支配を離れて、本来の目的である究極の真実を理解するためには、精神の内奥に潜む直感力のみを頼るべきとされた。


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(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」を新規公開中)


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