Archive for 10 June 2005

10 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 253


"You may come and go as you please,"said King Haggard to the Lady Amalthea. "It may have been foolish of me to admit you, but I am not so foolish as to forbid you this door or that. "

「そなたは、この城の中では気持ちのおもむくままに、好きなところに行くがよい。」ハガード王はアマルシア姫に向かって言いました。「そなたを迎え入れたのは、儂にとっては失態であったのかもしれぬ。だが、儂はそなたにこの城の中でこれをしてはならぬ、あれを行ってはならぬと禁じる程愚かではない。」

 シュメンドリックとモリーに彼等を城に迎え入れる条件に付いて宣告した後、アマルシア姫に対して語ったハガード王の言葉である。自らの客観的判断と自分自身の気まぐれの双方に対して、全く愚かな幻想や不注意な錯覚を持つことなく、常に冷徹に自覚していることのできるハガード王の明晰な意識が反映されている。そしてこの判断はアマルシア姫に対するものとしても、全く同様に的確なのである。

用語メモ
 foolish(愚か):愚かな人間は禁じることのできない事を禁じようとし、行わせることのできない事を命じようとするものである。ハガード王は一般の人間的感覚の基底を形成する「愚かさ」の極北にある人物なのである。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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