Archive for 11 June 2005

11 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 254


"I killed another dragon this morning," he said presently.
"That's nice," Molly answered. "That's fine. How many does that make now?"
"Five. This one was smaller than the others, but it really gave me more trouble.
"
 「今朝、また一匹ドラゴンを退治したよ。」リア王子は口を開きました。
 「素敵じゃない。」モリーは答えました。「立派なもんだわ。これで何匹目になる?」
 「5匹だよ。今度のやつはこれまでのより小さかったけれど、随分手間はかかったんだ。」

 台所で交わされるリア王子とモリーの会話である。料理番の手伝いをして、じゃがいもの皮むきをしながら、heroが退治したドラゴンのことを話している。それも、伝説の凶悪な怪獣が、あたかも狩りの獲物のように日常的感覚に引き落とされて語られているのである。キーワード“antifantasy”に関連する部分である。

用語メモ
 "another" (もう一匹。):神話的な崇高さを保持する存在や出来事も、反復して繰り返されることによって、陳腐な日常性へと変質してしまう。情報と知識の拡大がもたらした、現代社会の崇高性喪失の精神状況が反映されている。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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