Archive for 16 June 2005

16 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 259


"I have vanquished exactly fifteen black knights waiting by fifteen fords in their black pavilions, challenging all who come to cross. And I've long since lost count of the witches in the thorny woods, the giants, the demons disguised as damsels; the glass hills, fatal riddles, and terrible tasks; the magic apples, rings, lamps, potions, swords, cloaks, boots, neckties, and nightcaps."

「僕は、浅瀬の脇に黒い天幕を張って川を渡ろうとする者の全てに戦いを挑んでいた黒騎士達を、きっかり15人倒した。刺の森の魔女達や、巨人や、乙女の姿に変装した魔物達など、もう数も覚えていない程退治した。ガラスの山や、命のかかった謎解きや、難行の数々など、随分様々な冒険をしたものだ。魔法のリンゴもあったし、ランプに仙薬に剣に外套に長靴に、ネクタイにナイトキャップもだ。」

 川の浅瀬に待ち構えていて戦いを挑む黒騎士などは、アーサー王伝説等のロマンスに登場する、冒険の典型的パターンである。冒険もその数があまりに多いと有難味が薄れる。語っている本人も面倒になって、お終いの方は説明もいい加減になってきている。ガラスの山以降はむしろお伽話の中に登場する題材である。さらにネクタイとナイトキャップは、意味もなくおまけに付け足されただけのもののように思える。“anticlimactic catalogue”の典型的な例であろう。

用語メモ
 fatal riddles: "fatal"は「命に関わる」。正しい答えを見つけることができなければ命を奪われるという、スフィンクスの伝説等を思い起こさせる。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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