Archive for 19 June 2005

19 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 262


"My father hates cats. He says that there is no such thing as a cat--it is just a shape that all manner of imps, hobs, and devilkins like to put on, to gain easy entrance into the homes of men. He would kill it if he knew you had it here."

「父上は猫を嫌っておいでなのです。父上によれば、実は猫などという生き物は存在しないのです。本当はその正体は様々の魔物の類いで、人間の世界に紛れ込むためにこのような姿をとっているだけだとおっしゃるのです。ここに猫がいるのを父上がお知りになれば、父上はこの猫を殺そうとなさるでしょう。」

 ハガード王は猫を忌み嫌う。ハガード王によれば猫とは様々な妖精の類いが変身したものであるという。世界存在の根底にある普遍原理と人間の霊的理解を媒介するべく現れるfairyの要素の集約されたものが、本作品世界では猫であるとされているのである。ハガード王の体現する不毛さは、猫(fairy)を拒否するところから得られたものであるのかもしれない。

用語メモ
 imp, hob, devilkin:どれも皆妖精(fairy)の様々な種類の一つである。本来の民間信仰にあった妖精達とは、無気味で違和感を備えた、けれどもどこか不可解な親近感を時には与える存在であった。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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