Archive for 21 June 2005

21 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 264


"Cruel?" she asked. "How can I be cruel? That is for mortals." But then she did raise her eyes, and they were great with sorrow, and with something very near to mockery. She said, "So it is kindness."

「私の態度がひどい、ですって。」アマルシア姫は尋ねました。「私の振る舞いがひどいなんてことがあり得るでしょうか。そんなことは人間達のすることです。」けれどもそれから彼女は目を上げました。その目は悲哀に満ちていました。そしてまた、どこかしら冷ややかな部分もありました。「優しさなども同じことです。そんなものは、人間達のものです。」

 キーワード“eternal”と関連する部分である。永遠性の存在であるユニコーンには、人間的な優しさの感覚や酷さの感覚など、到底理解できないものである。ましてや愛や憎しみなどの感情も、ユニコーンにとっては愚かな執着でしかない。ユニコーンの言動には常に、人間の感覚を寄せつけないような、よそよそしさが感じられるのである。

用語メモ
 "great with sorrow":第4章でユニコーンが語っていた "sorrow" (悲哀)である。ここで用いられている“great”は“great with child”(子供を孕んで)と同様で、“〜が一杯”の意味である。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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