Archive for 23 June 2005

23 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 266


She turned her face to Molly Grue, and her eyes were not the unicorn's eyes. They were lovely still, but in a way that had a name, as a human woman is beautiful. Their depth could be sounded and learned, and their degree of darkness was quite describable. Molly saw fear and loss and bewilderment when she looked into them, and herself; and nothing more.

アマルシア姫はモリー・グルーの方に顔を向けました。その目はもうユニコーンの目とは異なるものになっていました。まだ十分に美しいものではあったのですが、ある意味で、言葉で言い表せるものになってしまっていたのです。丁度人間の女が“奇麗だ”、とでも言えるように。その目の深さはもう見通し、推し量れるものでした。その目の黒さはもう容易く言葉で語って、伝えることのできるものでした。モリーはその目を覗き込んで、畏怖と喪失と当惑を見て取ることができました。そして覗き込むモリーの顔も映っていました。ただ、それだけでした。

 キーワード“immortal”と反転的に関連する部分である。“人間性”(mortality)が“fear”や“loss”や“bewilderment”という言葉を用いて、象徴的に記述されている。アマルシア姫の目の中には、もう海も森の木々も見られないのである。ユニコーンの測り知れない永遠性が失われてしまっている。

用語メモ
 “name”、“sound”、“learn”:いずれも理性の力で理解し、把握する術を示している。果てしない永遠の崇高性であったものが、人間の知力で解明され、“語ることのできる”(describable)なものに収束してしまっているのである。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)



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