Archive for 25 June 2005

25 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 268


"He forbids everything, from lights to lutes, from fires to fairs and singing to sinning; from books and beer and talk of spring to games you play with bits of string."

「ハガード王は城の中のいかなる愉しみごとも、全て禁じてしまわれるのです。灯火も詩歌も、暖炉の火も祭り事も、歌を歌うことも罪を犯すことも、本もビールも、春の話も綾取りのゲームもです。」

 究極の真実のみを手に入れようとする貪欲なハガード王は、日常生活の贅沢や楽しみの全てを否定する峻厳なストイストでもある。ハガード王が禁じたとされる愉しみごとの羅列は、それぞれ頭韻を形成する韻律上の対の形で記述されている。意味を無視して韻律上の都合から記述対象に選ばれる語句群は、ナンセンス詩の作法上の一つの基本パターンでもある。

用語メモ
 talk of spring to games you play with bits of string:“春の訪れを待ちわびて語る話から、紐の切れ端で遊ぶ遊戯まで”とかろうじて意味もつながり、“spring”と“string”と、際どく韻律らしきものも保っている。記述様態の危うさをむしろ玩んだ、暴露的言語遊戯となっている。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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