Archive for 27 June 2005

27 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 270


He said, "The Red Bull is a demon, and its reckoning for attending Haggard will one day be Haggard himself." Another man interrupted him, insisting that the clearest evidence showed that the Bull was King Haggard's enchanted slave, and would be until it broke the bewitchment that held it and destroyed its former lord.

衛兵の一人が言いました。「レッド・ブルの正体は悪魔なんだ。そしてこいつがハガード王に助力するその代償は、最後にはハガード王自身の魂を奪うことになるのだ。」すると別の衛兵が横から口をはさんで言いました。「レッド・ブルは魔法にかけられたためにハガード王の奴隷となっているのであって、いつかはこの魔法を打ち破り、主人であるハガード王を殺してしまうことになるのは、どこから見ても間違いの無いことだ。」

 レッド・ブルに関する記述は、常に複数の可能性を並行的になぞった発散的情報として語られる。殊に象徴的な悪漢像として登場するハガード王との関係性において、その不定性の属性が顕著に示されている。ハガード王とレッド・ブルの関係とは、人格の分裂から生成する影の主題の変奏例として、本作品のファンタシー文学としての位相、つまりアンチ・ファンタシーとしての特質を決定するものである。第3章においてシュメンドリックの語っていたレッド・ブルに関する情報と対比すべきであろう。

用語メモ
 reckoning(代償):悪魔との契約を題材にした様々の伝説の主題において顕著であったように、ある一つの行為には必ずそれに相応する結果、あるいは条件が付帯するのである。助力を得ることに対する報酬の場合のみにとどまらず、宇宙全体を支配する密接で堅固な関係性の存在が、この言葉に巧みに反映されてもいる。

メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


[Read more of this post]
00:00:00 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks