Archive for 28 June 2005

28 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 271


The cat said, "He is going out. He goes out every sundown to hunt for the strange white beast that escaped him. You know that perfectly well. Don't be stupid."

猫が言いました。「牡牛が出かけるところなんだよ。あいつは、夜毎逃げ出した白い不思議な獣を狩り立てにでかけるのさ。そんなこと、良く分かっている筈だろう。驚くなんて馬鹿みたいだ。」

 いきなり揺れ動く城に慌てたモリーに対して、突然猫が言葉を発するのである。お伽話における通例のように、主人公に声をかけ、貴重な情報を伝えてくれる動物達は、人間を見守っていて常に好意的な助言を用意してくれる恩恵に満ちた自然を具現化したものである。かつて妖精達(fairy)の果たしていた存在論的意義がこれであった。このお話の中には妖精自身は登場することはないが、妖精に代替するものたちは、確かに存在する。

用語メモ
 talking animals:お伽話においては、動物たちどころか、草木やその他の自然物の全てが人と言葉を交わし、会話を行うのがごく当たり前であった。このような霊的交感を可能にするのは、近代の自然科学が採用することとなった世界観とは全く別個の原理に基づく統合的宇宙観なのである。そこでは存在と様態の根本が、理性の論証過程とは異質の図式において解釈されていたはずなのである。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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