Archive for 06 June 2005

06 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 249


Yet he stared at the Lady Amalthea's face for a long time, his own face giving back none of her light--as Prince Lir's had--but taking it in and keeping it somewhere.

ハガード王は長い間アマルシア姫の顔から目を離しませんでした。けれどもリア王子の時のように彼女の発する光を返すことはなく、ただその命の輝きを取り込み、奪い去るだけなのでした。

 リア王子の顔がユニコーンの輝きを受けて、その光を返すように自分自身の輝きを得たのに対して、ハガード王はその光を取り込むばかりで、輝きを新たに得ることはない。相互作用的に機能する筈の魔法の力がほころびて、自然との連関を喪失してしまった、あまりにも意識的な存在属性の示す生のあり方が、ハガード王によって暗示されている。全体性から乖離した近代的科学思想あるいは近代的自意識の極まった姿がそこに隠されているかのようである。

用語メモ
 近代的知性(intelligence):美を鑑賞するのも、宇宙全体を一つの対象物として理解しようとするのも、感じて考える自分自身を賞玩と考察の対象から隔離し、観る眼差しにおいて関係性を分断しようとする行為となる。理解しようと欲するその結果は、常に世界からの断絶に他ならない。知性に付きまとうディレムマである。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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