Archive for 09 June 2005

09 June

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 252


"As my magician, you will entertain me when I wish to be entertained, in manners variously profound and frivolous. You will be expected to know when you are required, and in what guise, for I cannot be forever identifying my moods and desires for your benefit. You will receive no wages, since that is certainly not what you came here for. As for your drab, your assistant, whatever you choose to call her, she will serve me also if she wishes to remain in my castle. From this evening, she is cook and maid-servant together, scrubwoman and scullery maid as well."

「儂のお付きの魔法使いとして、お前は儂の望みに応じてある時は厳かに、ある時は軽薄に儂を楽しませるがよい。儂が何時お前の奉仕を必要とするかは、お前が自分で判断せねばならぬ。どのように儂を楽しませるかも、同様じゃ。何故ならば、お前の便宜を図って、儂が気まぐれに望むものを儂の方で確かめて告げてやるつもりはないからじゃ。お前には給金は一切払わぬ。お前がこの城に参ったのは、そのようなもののためではないことは、明白だからじゃ。この売女については、助手と呼ぼうが、他の別な名で呼ぼうが、お前の好きにするがよいが、この城に留まりたいと言うのであれば、やはり仕事を与えることとしよう。この時から、料理番として、端女として、それから水仕女とその他雑益の全てをやらせることとしよう。」

 ハガード王の意志の強固さと、知性の明晰さと、判断の的確さと、人情に縛られない発想の自由さが推し量られる言葉である。人間原理的観点から言えば、最高級の資質を示す証拠と看做されるべき判断能力が、彼の用いるこれらの言葉の選択から確かに窺うことができる。しかし彼のこの能力は、自らの幸福や安寧に資するものでは全くない。

用語メモ
 吝嗇:ハガード王の無駄な贅沢を極端に嫌う性向が、金銭的に“ケチ”な結果を生む部分としてしばしば言及されている。しかし彼の示す吝嗇家振りは、実は不合理や脆弱さを極限にまで排除しようとする、頑強なストイシズムの現れとなっているのである。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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