Archive for 01 March 2006

01 March

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 105


 They were just everyday questions like these, and when you could not answer them you were told to make a cross; and it was really dreadful what a number of crosses even John made. Of course the only boy who replied to every question was Slightly, and no one could have been more hopeful of coming out first, but his answers were perfectly ridiculous, and he really came out last: a melancholy thing.
 Peter did not compete. For one thing he despised all mothers except Wendy, and for another he was the only boy on the island who could neither write nor spell; not the smallest word. He was above all that sort of thing.
 By the way, the questions were all written in the past tense. What was the colour of Mother's eyes, and so on. Wendy, you see, had been forgetting, too.

 ウェンディが出した問題は、こんな風な毎日の生活に関するものでした。答えを見つけられない時には、バツを付けなければなりませんでした。ジョンさえもが、あまりに沢山のバツをつけてしまったことは、恐ろしいことでした。たった一人、どの質問にも答えを書いたのは、勿論スライトリーでした。そして、他には一等をとれそうな子は、いそうにないと思われました。けれどもスライトリーの答えは、どうしようもない程滅茶苦茶なものだったので、実際には最下位の成績だったのです。何と哀れな奴でしょう。
 こんな時、ピーターはみんなと張り合おうとはしませんでした。一つにはピーターは、ウェンディ以外は、お母さんなんてものはすべて馬鹿にしていたからでした。もう一つには、島にいる子供達の中でたった一人ピーターだけが、字を書くことも読むこともできないからでした。ほんの短い単語すら、ピーターは知りませんでした。そのようなこととは一切関りを持たないのが、ピーターだったのです。
 ところで、問題はみんな過去形で書かれていました。「お母さんの目の色はどんな色だったでしょう。」という具合です。お分かりのように、ウェンディもまた、記憶を失いつつあったのです。

 ここでは、両親と暮らしていた現実世界での記憶のあやふやな他の子供達と対照して、ピーターのさらなる飛び抜けた無知の部分が強調されている。理性の束縛を脱した究極の“無知”とは、“ピーター・パン”という抽象概念の存在論的特質を表すキーワードなのである。

用語メモ
 cross:○と×の“×”である。ちなみに“マル”は“circle”。




和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む
5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。
◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)


「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
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kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

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