Archive for 20 March 2006

20 March

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 124


 Here and there a head bobbed up in the water, and there was a flash of steel followed by a cry or a whoop. In the confusion some struck at their own side. The corkscrew of Smee got Tootles in the fourth rib, but he was himself pinked in turn by Curly. Farther from the rock Starkey was pressing Slightly and the twins hard.
 Where all this time was Peter? He was seeking bigger game.
 The others were all brave boys, and they must not be blamed for backing from the pirate captain. His iron claw made a circle of dead water round him, from which they fled like affrighted fishes.
 But there was one who did not fear him: there was one prepared to enter that circle.
 Strangely, it was not in the water that they met. Hook rose to the rock to breathe, and at the same moment Peter scaled it on the opposite side. The rock was slippery as a ball, and they had to crawl rather than climb. Neither knew that the other was coming. Each feeling for a grip met the other's arm: in surprise they raised their heads; their faces were almost touching; so they met.

 あちこちで水の中から子供達の顔が浮かび上がっていました。鋼の刃が光り、悲鳴や歓声が後に続きました。混乱の中で味方に斬りつけてしまうものもいました。スミーのコルクスクリューはトゥートゥルズの第4肋骨の部分に突き立てられました。けれどもスミーはその代りにカーリーに流血させられました。向こうの岩のところではスターキーがスライトリーと双子を追いつめていました。
 この間、ピーターはどこにいたのでしょう?ピーターはより大きな獲物を求めていたのでした。
 他の子供達も皆勇敢な戦士でした。ですからフックのあまりの勢いに後ずさりしてしまったからといって、責められる筋はありません。フックの鉄の鉤爪は彼の周囲にすさまじい水しぶきの輪を作って、子供達はそこから怯えた魚の群のように逃げまどっていたのでした。
 けれどもフックを恐れることのないものが一人だけいました。その恐ろしいしぶきの輪の中に踏み入ることのできるものです。
 奇妙なことに、彼等が顔を合わせたのは、水の中ではありませんでした。フックは息をつくために岩の上にあがろうとしました。丁度その時、ピーターは反対側の方からあがろうとしていたのです。岩は玉のように滑りやすく、彼等はしがみついて昇らなければなりませんでした。どちらも相手が向こう側にいることに気が付いていませんでした。そして互いが手がかりを求めて手を伸ばし、その手と手が出会ったのです。驚いて二人とも首を伸ばしました。二人の顔はぶつかりそうになりました。こんな風にして、フックとピーターは遭遇したのです。

 岩の上で顔を合わせたピーターとフックの両者のとる姿勢は、あたかも鏡像を覗き込む人のようである。鏡面的反射は、影の主題を導く状況あるいは様相としてはなはだ暗示的である。

用語メモ
 dead water:海事用語で“航跡渦流”という。読んで字の如し。




和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

 平成17年12月21日和洋女子大学にて開催の
“ポエトリー・リーディング”
において行った朗読、「“Frivolous Cake”ー“浮気なケーキ”を読む」をアップロードしました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/speech/cake/cake.html

 “公開講座8” The Last Unicorn『最後のユニコーン』の世界
を追加しました。
http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/H17E_fest/eibun.htm
論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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