Archive for 05 March 2006

05 March

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 109


 The extraordinary upshot of this adventure was -- but we have not decided yet that this is the adventure we are to narrate. Perhaps a better one would be the night attack by the redskins on the house under the ground, when several of them stuck in the hollow trees and had to be pulled out like corks. Or we might tell how Peter saved Tiger Lily's life in the Mermaids' Lagoon, and so made her his ally.
 Or we could tell of that cake the pirates cooked so that the boys might eat it and perish; and how they placed it in one cunning spot after another; but always Wendy snatched it from the hands of her children, so that in time it lost its succulence, and became as hard as a stone, and was used as a missile, and Hook fell over it in the dark.

 この冒険の意外な結末はというと、…とは言っても、まだこの冒険のことをこれからお話しすると決めた訳ではないのでした。もっと適切なのは、インディアン達が行った、地下の隠れ家への夜襲の件かもしれません。この時、何人かのインディアン達は木の穴の中で身動きが取れなくなってしまって、コルクの栓のように抜き出してもらわなければならなくなったのでした。あるいは、人魚の入江でピーターがタイガー・リリーの命を救ってやって、彼女を仲間にした時のことをお話するのがよいかもしれません。
 それとも、海賊達が子供達を罠にかけるために焼いたケーキのことをお話ししてもよいかもしれません。海賊達は、次から次へと巧みにこのケーキを様々の場所に仕掛けておいたのですが、その度毎にウェンディは子供達からこのケーキを取り上げてしまったのでした。そうするうちにケーキはだんだんと干涸びてきて、石のように固くなってしまったのでした。そして最後には飛び道具として用いられ、フックが暗闇の中でつまづいて転んでしまう結果となったのです。

 『ピーターとウェンディ』のお話を進行させていく上で、これから語るべき話題の候補として3種類のエピソードが紹介されている。ここにあげられた「語られる以前」のこれら3つのエピソードは、最終的に『ピーターとウェンディ』という作品世界内部において実際に生起した事実であるのか、あるいはそうでないのか、どちらなのであろう?そしてまたこれらの先行する3つのエピソードと、その後にさらにもう一つの候補としてあげられたケーキのエピソードとは、仮構世界内における“事実度”において程度の違いはあるのだろうか?

用語メモ
 物語(narrative):仮構世界である“物語”は、文字通り何らかの方法で“物語られた”内実として存在する。その“語り”はどの時点で語りとして完成され、仮構世界内の一つの事実として定着することになるのだろうか?現実世界における“事実”と仮構世界における“事実”とは、どの程度まで共通の属性を持ち、いかなる部分で根本的な異物であると考えるべきものなのであろうか?これら二つの“事実”の間に何らかの違いが指摘し得るとするならば、何故我々は“事実”という言葉を現実世界と仮構世界の双方に対して適用し、意味のある言及を行うことが出来ているのだろうか?ひょっとして、仮構世界に対して“事実”という言葉を用いてその内実を語ろうとすること自体が、何らかの誤謬を含むものなのであろうか?





和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中











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