Archive for 07 March 2006

07 March

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 111


Chapter 8

THE MERMAIDS' LAGOON

 If you shut your eyes and are a lucky one, you may see at times a shapeless pool of lovely pale colours suspended in the darkness; then if you squeeze your eyes tighter, the pool begins to take shape, and the colours become so vivid that with another squeeze they must go on fire. But just before they go on fire you see the lagoon. This is the nearest you ever get to it on the mainland, just one heavenly moment; if there could be two moments you might see the surf and hear the mermaids singing.

 もしもあなた方が目をつぶったら、もしも運がよければ時には暗闇の中に宙づりになった、綺麗な淡い様々な色をした水たまりのようなぼんやりしたものが見えるでしょう。それから目をぎゅっと強くつぶると、その水たまりのようなものはだんだんと姿をはっきりとさせてきて、その色はとっても鮮やかなものになり、さらにもう一度ぎゅっと目をつぶればきっと火がついたように燃え上がる筈です。けれども燃え上がる直前に、礁湖が見えるでしょう。これが本土で近づくことの出来る最高のところです。天国に行ったような一瞬です。もしもその一瞬のもう一つ先があったならば、渚が見え、人魚達が歌っているのを聞くことが出来るかもしれません。

 ネバーランドの珊瑚礁について語るこの記述は、ネバーランドそのものが人々の意識の深奥にあり、そして複数の個人の霊性の共通項として存在する、普遍的な心の中の世界であることを物語っている。そしてこの至福に満ちた内的景観の与える印象は、宗教的な苦行の結果として時に感得されることのある、光明に満ちた世界の真実を示唆する啓示の一種であるかのようである。

用語メモ
 啓示(revelation):意識の主体に対して及ぼされる神的存在からのメッセージ、あるいは個人としての限界を越えて感知する統合的知覚の一つ、等様々の異なった解釈がなされ得るものの、現象的かつ歴史的に普遍的な概念ではある。




和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



「ミクシィ」でコミュニティ「アンチ・ファンタシー」を開設しました。
◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
◆ アニメーション版「最後のユニコーン」における視覚表現についての解説を公開中です。
◆ ピーター・ビーグルに関する書誌データを公開中です。

http://mixi.jp/view_community.pl?id=427647

参加希望の方は、以下のアドレスにご連絡下さい。招待メールをお送りします。

kuroda@wayo.ac.jp



メインページurl http://www.linkclub.or.jp/~mac-kuro/

論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中




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