Archive for 09 March 2006

09 March

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 113


The most haunting time at which to see them is at the turn of the moon, when they utter strange wailing cries; but the lagoon is dangerous for mortals then, and until the evening of which we have now to tell, Wendy had never seen the lagoon by moonlight, less from fear, for of course Peter would have accompanied her, than because she had strict rules about every one being in bed by seven. She was often at the lagoon, however, on sunny days after rain, when the mermaids come up in extraordinary numbers to play with their bubbles. The bubbles of many colours made in rainbowwater they treat as balls, hitting them gaily from one to another with their tails, and trying to keep them in the rainbow till they burst. The goals are at each end of the rainbow, and the keepers only are allowed to use their hands. Sometimes a dozen of these games will be going on in the lagoon at a time, and it is quite a pretty sight.
But the moment the children tried to join in they had to play by themselves, for the mermaids immediately disappeared. Nevertheless we have proof that they secretly watched the interlopers, and were not above taking an idea from them; for John introduced a new way of hitting the bubble, with the head instead of the hand, and the mermaids adopted it. This is the one mark that John has left on the Neverland.

 人魚達の姿を眺めて一番ぞくっとする不思議な時は、月の満ち欠けの始まりの時でした。人魚達はこの時期になると、うめくような奇妙な声をあげるのです。けれどもそんな時の礁湖は、人間には危険な場所でした。そしてこれからお話する晩になるまでは、ウェンディは月の昇った時にここに来たことはありませんでした。それは怖いからではなく(ピーターがきっと付いて来てくれる筈なので)、むしろ7時までには誰もが床につかなければならないという厳しい決まりがあったからです。けれどもウェンディは雨の降った後の晴れた日などには、よく礁湖を訪れたものでした。そこでは数えきれない程の人魚達が水面に浮かび上がって、自分達の作った泡に戯れているのです。人魚達は、虹色に染まった水に浮かんだ様々の色の泡をボールのように使って、はじけるまで尻尾で打ちあったり虹の中に押し込んだりして遊んでいるのです。ゴールは虹の両端です。ゴールを守る人魚は、手しか使ってはなりません。時には、1度に12もの試合が同時に行われていることもあります。それは中々の見物でした。
 けれども子供達が仲間に入れてもらおうとしても、人魚達はすぐに姿を消してしまうので、一緒に遊べたことはありませんでした。けれども、人魚達が身を隠してそっと子供達のこと見守っていたのは、確かなことでした。そして子供達の遊び方を真似たことさえあったのです。というのは、ジョンは新しい泡の打ち方を思い付いたのです。それは手の代わりに、頭で打つというものでした。人魚達はこのやり方が気に入ったのです。これは、ジョンがネバーランドに残した痕跡の一つとなりました。

 妖精の場合と同様に、決して友好的ではなく、むしろ無気味な一面を覗かせる人魚達の様子が語られている。人間の願望によって一方的に理想家された異世界も、身近な場所に実体化した場合には危険なものとなる。これは『ピーターとウェンディ』全編を貫く一つの図式となっている。

用語メモ
 haunt:本来は“よく行く”、“しばしばおもむく”という意味の語であるが、“幽霊などが出没する”という意味でよく語られる。従って“haunting”は“無気味な”、“空恐ろしい”という意味の形容詞として用いられる。



和洋女子大学公開講座のお知らせ
 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む

5月の毎週土曜日:5月6日、5月13日、5月20日、5月27日の4回、
2時から開催です。

連絡先:和洋女子大学 渉外課  047-371-1473

◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。これがファンタシー文学一般の中心的主題と考えられるものなのです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



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◆「最後のユニコーン」に関するSue Matheson氏の論文の解説等を行っています。
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kuroda@wayo.ac.jp



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論文、“アンチ・ファンタシーというファンタシー2:ファンタシーにおける非在性のレトリック─『最後のユニコーン』のあり得ない比喩と想像不能の情景”を新規公開中



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