Archive for 06 October 2010

06 October

佐倉セミナー・ハウス 文化・教養講座 テキスト公開 3


 アメリカ版のアニメ『エルゴ・プラクシー』は、難解な主題をよく把握して詳細な註釈などが付け加えられているのですが、一部には日本語の内容を誤解してしまっているところもありました。どのような箇所で日本語は誤って聞き取られるのか、具体的な事例を検証しながら、この野心的なアニメ作品の核心に迫っていきます。

『エルゴ・プラクシー』誤訳部分


EP 03 「無への跳躍」
リルの処置について討議する執国の4体のオートレーブ達の会話。

 「勘が鋭敏すぎるのだ。」
 「全く、誰に似たのかしら。」
 「市民は全て並列化された情報を雛形にしている。局所的近似値には何の意味もない。」
 「やはり情報局などには配属すべきではなかったのだ。」
 「いや、教育的観点から考えても適切な判断だった。」
 「その証拠に、市民レベルとしては最高の感受性を保持している。」
 「素晴らしい結果だ。」
 「しかし、そこから派生する行動力こそが元凶だ。」
(However, we now have to deal with the initiative she has recently displayed.)
 「元凶というならば警備局はどうだ。」
(Speaking of the present, what about the Security Bureau?)
 「案ずることはない。あれだけ念押ししたのだ。」
 「いずれにせよ、このロムドが揺らいでいることは否定できない。」
 「一刻も早く事態の解決に向けた迅速な措置を。でなければ。」
 「レゾン・デートルの崩壊。」

EP 04 「未来詠み、未来黄泉」
 ドーム外部のコミューンの住民フーディは、ヴィンセントの看病をしながら、ジョー・ブスケの詩を朗読し続けている。

 記憶を辿りうなされるヴィンセントに、フーディの声がさらに聞こえる。「そこにあるあらゆるものは、町でも教会でも川でも、色彩でも光でも影でもなかった。」
(Of all of the things there, it had no cities, no boundaries, no rivers, no color, no light and no shadow.)
 ジョー・ブスケは、第1次大戦で彼に半身不随という苦難をもたらした傷について、「“傷”は自分の存在以前にもともと有り、自分という存在がその傷を具現した」と啓示的な随想を語った詩人であった。社会制度と心霊存在の本質を追究した哲学者ドゥールーズは、その著書『意味の論理学』の一章「できごとについて」でジョー・ブスケを取り上げ、“できごと”と“存在”の関係について独特の哲学的考察を展開している。“深層”である身体と“表層”である記号的概念が、“私”という意識存在において結びつくことによって“具体化”されるとドゥールーズは考えていた。ガタリは精神病理学者としてフロイト的な精神分析とは異なる、環境全体を視野に入れた心霊解釈を追求した。ドゥールーズとガタリは、資本主義と分裂病に関する論考を行った『アンチ・オイディプス』と『千のプラトー』の二部作を共著で著している。

EP 10 「存在」
 突然起こった2分17秒間の停電事故についてラウルに報告する事務官達。
 ラウルは何かを察知し、デダルスに会うことにする。

 「気味が悪いだろう。」
 (You are wicked.)
 「お遊びが過ぎたな。」
 (It is long past play time.)

EP14 「貴方に似た誰か」

  「僕は、誰かのふりをして愛してもらうことを覚えた。
(I remember pretending to be someone else, in order to be loved.)

EP22 「桎梏」
 リルの目の前にもう一人のリルが現れる。「初めまして。もう一人の私。」
 銃を構えるリルに彼女は言う。

 「哀しいことしないで。」
 (Don’t be sad.)

 デダルスは叫ぶ。「ヴィンセント、ヴィンセント。みんなあいつだ!」
 (It’s all his fault.)

 「ヴィンセントは本当にこの街を造ったのか?」
 「このドーム、そして良き市民の基となる数十体。」
「後はウー厶・シスでの管理増産。」
(And all that was left was the creation and regulation of the Eumesis.)

リルはエルゴ・プラクシーに語る。
 「私が引金を引くと?」
(I will pull the trigger.)

EP23 「代理人」

デダルスは、愛想を尽かしたようにリルに言う。
「吐き気がするよ。」
(You’re too ambitious.)

空高く舞い上がったモナド。
 「聞こえる。計画。受け皿と。
呼んでいたのは、あなた達だったのね。」
(The one we were calling was you, wasn’t it.)

23:04:44 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

2010和洋女子大学学園祭 公開授業

今年の学園祭の公開授業は「アニメ・ゲーム研究」です。


 アニメのディスクを沢山用意して、リクエストに応じて希望の作品を上映します。鑑賞しながらお話しましょう。様々のテーマから、アニメ論の講義もします。隠れた名作を紹介したり、主題の解説を行ったりします。

アニメ:新房昭之作品特集
 映像表現に注目しよう。
 『ソウル・テイカー』
 『絶望先生』
 『化物語』など。

ゲーム:作品世界の設定を検証しよう
 『Fate stay night』
 『マブラブ・オルタネイティブ』

場所: 東館10階の10−2教室
時間: 10月30日(土)、10月31日(日)の両日共、
 1時から4時までずっと。
 好きな時に入室して、好きな時に退室できます。
22:55:27 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks