Archive for 07 October 2010

07 October

佐倉セミナー・ハウス 文化・教養講座 テキスト公開 4

デーモンとラプラスの魔あるいはマクスウェルの悪魔

 “デーモン”(魔神)は、ユダヤーキリスト教的な一神教の“神”概念とは異なる、自然界の根源的作用を司る宇宙の機能の一つとして理解することもできる存在である。だからニュートンが力学的世界観の中で採用した“引力”は、一つのデーモンとして現れた、全体性の宇宙の一断面としての位相でもあり得る。宇宙を構築する自然法則の各々が“デモーニッシュな力”として存在物としての“魔”と呼び換えられているのである。ソクラテスは自らの内なる声を“ダイモニオン”と呼んで、その示唆に身を任せた。“デモーニッシュ”な力は、人間存在の全体性との繋がりを前提とするものである。
 これに対してキリスト教神学においては、布教を拡大した地域に以前から信仰の対象としてあった神格の全てを悪魔として処理しなければならなかったので、膨大な数の神々を教義的に“悪魔”として同定するための体系である“悪魔学”を構築する必要が生まれた。ギリシア神話の神々のポセイドンやヴィーナス達が、紛れも無い“悪魔”と看做されることになったのである。神に反逆した天使ルシフェルは“悪魔”と呼ばれることになったが、日本語訳における“悪魔”と“魔”の使い分けはあまり明瞭になされていないようである。

20:41:07 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks