13 August

大学講義の問題点ー愚民教育の圧力とその対処 3

知のパラダイム
 Paul H Wildman 氏の以下の論文において全く同等の見解が見事に語られていました。

Ancient Wisdom in Modern Age: An Archaic Renaissance
https://www.academia.edu/29603918/Ancient_Wisdom_in_Modern_Age_An_Archaic_Renaissance

Wildman 氏は的確な比喩を用いて、現代西洋文化の具体性を欠いた知の受容のあり方の問題点を語っています。

we suffer from the Western malaise of ‘displaced concreteness’

旅と目的地に擬えて体験と達成の結果との乖離が指摘されています。

they forget their route and only see the destination, like seeing a trip to say ‘higher consciousness’ as a train journey on a train line made by others with predetermined stations

 個人的な体験によるクオリアの獲得とは無縁の知の獲得が組織的に強要されている状況は、近代西洋文化の「学」の歪んだ特質であると同時に、日本の社会に根深く浸透している共同体的な慣習の根底にある悪弊でもあります。近代日本はある意味西洋よりも成熟していて堅固な体制を構築してしまっているので、この事実に気付くことが困難になっている状況があります。
 その例の一つが「お勉強」です。日本では「お勉強」は、体制に呑まれることを選んだ学生が屈従の身振りとして親や先生のために行うものとされています。その結果として表明されるものは、個人の抱いた疑問の結果や探究心の結果導かれた見解などではなく、組織的圧力として与えられた規範を遵守した「正解」です。
 教える教師も教わる学生も本心でこの「正解」を信じているのではないので、双方のお互いの暗黙の了承を示す合意の証として、試験勉強が実施されその結果評定がなされます。よくできる学生は、たとえ試験問題そのものに不備があった場合においても、望まれる通りの模範的な答案を作成し、巧みに問題の欠陥を補修することさえできます。
 制度としての教育課程に数段勝る安定した組織保全機能を持つ日本の慣習機構は、学生のみならず教員や支配者さえも無意識の背後から支配し続けているのです。
 その結果現在の大学では、茶番劇のようなFDや自己点検作業が繰り返されているのですが、いい年をした大学教員が中学のホームルームの優等生のように従順な態度を演じている実態には、かなり不気味なものがあります。
 免罪符販売業者を演じていた聖職者と同様に、機械的に中身の無い知識の細切れ販売を行うのが慣習となった大学と学会においては、本気で意識の主体と宇宙の関連を捉えようとする思考と行動は、犯すべからざる禁忌なのです。
 現代文化を蝕む病理の原因は、業者との癒着による利権やその結果もたらされた欺瞞的な教育方法の運用以上に、むしろ時代精神の根底にある思想的な歪みに認められるものでしょう。
 「現代」は「意識」を封殺した体制であったようです。 Wildman 氏は「知」と意識の関係を以下のように語っています。

Human consciousness is a self-referential system which embodies the principle of connection between logic and chaos in holistic (‘whole brain’) awareness.

 教える側が黙殺し、教わる側が封印してきたため、解放される場所を失ってともすれば暴走を始める宗教的要素を正しく掬い上げる配慮が求められているはずです。

 Wildman 氏は以下のように語っています。

Religion and spirituality are largely about trying to understand the nature of consciousness in relation to the cosmos, so it is completely logical and natural to expect that we might actually come to understand the religious aspect of existence by following the conscious mind into its source nature in Nature.

科学の本質は、宇宙の全体像を個人の内面の意識との連関として把握することを試みる、全方位的な宗教的問題意識にあるはずなのですが、教育とマスコミは科学を統合的視野を欠いた「応用技術」に失墜させ、宗教的要素を「神頼み」と「盲信」と決め付けることに執心しているようです。
 Wildman 氏の指摘とは程遠い、哲学と宗教の要素が剥奪された形骸的な教育体制の中で繰り返されている欺瞞的な大学組織の自己点検の実態を報告しておきます。
 どれも皆FDの一環として参加を求められ、当局の要求に従って提出した報告書です。無知主義教育に追従することを拒否する姿勢を示した点検報告書ではありますが、ロシアとは異なり召喚されることも罰金を課されることもありません。提出したままの記載が冊子にまとめられ、配布されます。しかしその内容については全く無視されたまま、等質の欺瞞行為が繰り返されています。弾圧はしないが追従姿勢を維持するのが大学の組織運営であり、社会全般の規範なのです。

FD研修会 データサイエンス講習の感想
Impression for FD Data Science Workshop

https://www.academia.edu/60400863/Impression_for_FD_Data_Science_Workshop

FD研修会 遠隔講義方法講習の感想
Impression for Faculty Development Presentation
https://www.academia.edu/50043542/Impression_for_Faculty_Development_Presentation

FD研修会 アクティブ・ラーニングアンケート記入結果
Active Learning Training Session
https://www.academia.edu/37291555/Active_Learning_Training_Session_docx

同様の趣旨で「研究費の健全な利用」のための手引きとなる本が配布され、感想文の提出が求められました
感想文 『科学の健全な発展のために〜誠実な科学者の心得〜』
Impression for scientific ethics manual
https://www.academia.edu/36351941/Impression_for_scientific_ethics_manual_docx

授業内容に対する総合的な自己点検の報告書の提出が求められました。
授業内容点検報告
Lecture Management Inspection Report
https://www.academia.edu/36351823/Lecture_Management_Inspection_Report_docx

 これらの欺瞞的な自己点検事業に見られる遠隔講義下の大学教育の現場の露呈する事態の深刻さに鑑み、自発的に提出した点検報告書が以下のものです。
Problems of Remote Lectures
https://www.academia.edu/59077511/Problems_of_Remote_Lectures

 形骸化した大学講義のあり方の問題点に対する対処の一例として、与えられた知識を自分自身の動的な刺激として応用的な活用を図るために「クリエイティブライティング」の可能性を意識した講義運営がなされた実態の報告書です。
English b Lecture Management: Viewing Comprehension and Creative Thinking
https://www.academia.edu/45551603/English_b_Lecture_Management_Viewing_Comprehension_and_Creative_Thinking


 クリエイティブ・ライティングの趣旨を講座運営の中心理念として採用した講義「こんにちの文化」の講座運営報告書です。
Creative Writing and Lecture Management of Culture Today
https://www.academia.edu/42254695/Creative_Writing_and_Lecture_Management_of_Culture_Today
09:11:55 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

大学講義の問題点ー愚民教育の圧力とその対処 2

本質的問題点
 愚民教育の弊害は現在大変深刻なものとなっていますが、直接の原因である政府や役人の不実を糾弾しても実際に得るものはあまり無いので、むしろ根幹的な問題点の指摘を図りたいと思います。
 
知覚情報の延長(extension)と内包(connotation)
 自分自身と周囲の環境についての情報を瞬時に把握するためには、生起しつつある現象の時間的・空間的因果関係を読み取る範囲を限定する必要がある。連関する情報を制限無く辿り続けていくと、情報処理を完結させることができなくなるからである。
 人間知性は無意識のうちにこの峻別作用を行い続けている。知覚として存在/現象の内実を判断する際、実は人間知性は過去の経験の総体から得られる“類比”(アナロジー)として“現状”に意味を与え、認識の対象を判断可能な特有の形式に変換している。全ての経験がデジャビュ(既視感)あるいはその修正として認識の対象となっているのである。
 このような“単純化”あるいは類比の機能を初期条件として与えられていないAIのような情報解析装置は、現象を形成する諸要素の延長と内包を限りなく分析し続け、判断基準となるべき暫定的意味を構築する術を獲得することができないだろう。
 “意味”は現在の“自分”を確定するために存在し、さらに“自分”としての存在の宇宙全てとの関係を、理解可能な経験情報として変換することによって生まれるのである。意識は生きてきた過程の連続性における意味の進展として、宇宙の全ての集約的反映を通じて“現在”を形成し、存在と現象の全てに意味を賦与する。
 しかし“教育”により知覚と主体的意味を剥奪された“客観的意味”として策定された記号のような“擬似的意味”は、世界と意識の主体の間にある有機的意味の連繋を断絶し、世界から自分を切り離すことになる。
 “正解”として策定された意味が予め定められたものとしてあり、その内実を体験として実感することなく反射的に記号等を選択することによって答えることを要求する受験教育は、意識を体験から切り離して知覚に本来付随する筈の味わいや風味を無化することによって、精神を枯渇させているのである。
 この典型的な例が、“消去法”による解法である。主体的な意味を構築する体験を経ることなく、定められた“正解”を内実の把握を得ることなく推測することが当然の手段として認められているからである。
 キリスト教神話の中でサタンがイブに与えたとされる“知恵の実”は、人が獲得したこのような膠着した思考のことであったと解釈してよいのかもしれない。アダムとイヴが楽園から追放されたと語っても自ら楽園を手放したと語っても、本質は実は同じことである。
 動作の主体と客体を分別する理念にとらわれないmonismの発想に従って存在と現象の全てを把握し直すならば、意味はもともとありもしなかったし、同時にいつでもずっと有り続けているのである。
 2018年に和洋女子大学で開催された「シニアフォーラム」のテキストでした。

「知覚情報の延長(extension)と内包(connotation)」
https://www.academia.edu/36797813/Meaning_Experience_and_Monism_docx
09:06:27 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

大学講義の問題点ー愚民教育の圧力とその対処

大学講義の問題点ー愚民教育の圧力とその対処  学生アンケートの悲惨な実態を憂えるツィートが、あちこちに書き込まれているようです。しかしまだ遠慮があって、根幹的な問題点を指摘することを控えている方たちが多いようです。その部分をあえて語ってみます。  文部科学省は大学管理の簡便な手段として、形骸的な自己点検作業や欺瞞的FD開催を繰り返すことを大学に強いています。  また大学の組織運営を担う筈の管理的部署にある人たちも、本気で内実ある講義を行おうとする教員があることは手っ取り早く組織改善の実績を捏造することの妨げになるため、むしろ講義環境を害する学生たちの無軌道な行動を後押しして、組織管理に呑み込まれない教員の排除を図ろうとしています。  教育を授ける側と教育を受ける側の無責任の相乗作用のため、現在大学教育の現場は大変悲惨な状況に陥っています。  そんな中で碌にカスタマイズができない硬直した教育用ネットワークが次々と導入され、本来の学習効果を伴わない業者主体のキャリア教育や各種検定試験が惰性的に導入され続けているのが多くの大学のあるがままの現状のようです。  これらは全て、現在政府と報道機関が連動して推し進めている愚民教育の実態を浮き彫りにするもののように思われます。教育者の思惑を忖度して信じてもいない正解を無難に答える術を身に着けることが「教育」の目的であると学生に誤認させる無言の圧力が、日本の社会の基盤にはあるようです。

自己点検報告書  以下は、このような問題点を指摘するために2021年度後期に大学当局に提出した「英語b-II」の「出席状況確認報告」です。  黒田担当の英語b においてはネット上で仮想的な出席を行う機会は設けず、講義資料の実際の閲覧に基づいた質疑応答を行う完全なオンデマンド形式で運営されておりますので、機械的な「欠席」照合はありません。  後期の講義参加に必要な質疑応答のためのスレッドをmanaba course 上に設けるために初回のレポート提出を課しましたが、若干の未提出者があったためこれを救済するためにさらにもう1回のレポート提出の機会を設け、10月9日を提出期限として講座運営方法に対する理解を促しました。  その結果いずれにも対応が無く講義進行についてくる条件を満たしていないものを「レポート提出」の欄に「X」を付けて示しています。  この方達は後期の講座受講を放棄したと見做されるのですが、15回分の講義内容を公開してあるmanaba course の1回目あるいは2回目に閲覧の痕跡があるのは、ひょっとして講義実施要領として公開してあるmanaba course の記載とコースニュースのいずれにも目を通していないため、講座運営方法に対する正しい理解を得ないまま惰性的に閲覧の痕跡を残したものとも考えられます。  manaba course には受講上の手引きとなるガイダンスと共に15回の講義課題とこれに対応する後期試験問題がが既に公開済みですが、3回目以降はいずれのクラスも閲覧を済ませていない受講生が多くあるため、履修状況を示す参考データとして用いることはできませんでした。  また、「閲覧済み」が必ずしも実際の内容確認を実証するものではないことは、前期の各回の課題に対するレポート送信の内容が出鱈目な推測に基づく回答が多く、講義主題の把握を反映していないことから判断できます。  かなりの学生達が形式のみの「出席」の痕跡を設けることに執心し、実際に講義から得られる成果を望む気構えを失ってしまっているのは、遠隔講義におけるzoom 等の受動的な視聴に基づく受講体制に適合してしまった学生達の抱える深刻な問題点だと思われます。  質疑応答の場の確保ができてはいても、実際のmanaba に掲載した講義資料の閲覧が得られていないであろう学生達が存在するのが問題ですが、現時点では厳密な実態の把握にはまだ至っていません。  今年度後期は毎週毎のレポート課題の提出に対する無内容なレポート提出が惰性的に行われないように配慮して、講義課題の閲覧もレポート提出も期限を設けず自発的な質疑応答を通して受講生各人との双方向的な情報交換を通して進行しているからです。  これまでに得た反応では、講座運営理念を把握して自ら身に着けるべき主体的な知識を学び取る姿勢を示してついてきてくれる受講生も多くなってきました。対面授業で行っていた以上の内容のある講義が遠隔講義の環境で達成され得ることを立証する具体例が得られたと考えています。  その反面、身に付いた欺瞞的な受講姿勢から脱することができず、見当違いな八つ当たりを短絡的に行う学生が今後現れてくることも予想されます。  これらの方達に対する対処を誤ったならば、今後の本学の教育体制そのものが損なわれてしまうであろうことが懸念されます。既に前期終了直後にいくつかのその兆候が見られたのですが、大学としての対処が必ずしも適切なものでなかったことが気がかりな部分です。
09:04:05 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

09 April

2021年度ツィッター講義開始

「こんにちの文化」と「英語b」のツィッター講義を開始しました。

「こんにちの文化2021」
https://twitter.com/mackuro3/status/1378534864085905411

愚民化教育に対するレジスタンスとして、「文化的テロ」の分岐スレッドを以下のリンクで展開中です。
https://twitter.com/mackuro3/status/1379036648642551812

大学の動画配信サーバ CLEVAS にアップしたフィギュア検証動画をツィッターに転載しています。

プロトタイプと初期の初音ミクフィギュア
https://twitter.com/mackuro3/status/1383917371388088326

レーシングミク軸
https://twitter.com/mackuro3/status/1465535202529214466

初音ミク 変化形
https://twitter.com/mackuro3/status/1466257210846023680

ミクモ
https://twitter.com/mackuro3/status/1466634774475591683

ドール ミク
https://twitter.com/mackuro3/status/1467376521774243843

初音ブライスミクと初音ミクブライス
https://twitter.com/mackuro3/status/1467403070711939072

戦場ヶ原ひたぎ
https://twitter.com/mackuro3/status/1468057680497758214


「英語b 2021」
https://twitter.com/mackuro3/status/1378596914514391041



18:39:01 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks

25 February

2020年度遠隔授業 ツィッター講義まとめ

2020年度の遠隔講義補完資料として、ツィッターを利用して公開したスレッドのまとめとなる資料を、論文公開サイト Academia にアップしました。現時点で公開されている講義資料のリンクを以下に記します。

2020こんにちの文化 メイン
Culture Today Twitter Lectures main
https://www.academia.edu/45622426/Culture_Today_Twitter_Lectures_main

こんにちの文化 アニメ鑑賞回
Culture Today Ergo Proxy and Black Rockshooter Twitter Lectures
https://www.academia.edu/45627671/Culture_Today_Ergo_Proxy_and_Black_Rockshooter_Twitter_Lectures

2020こんにちの文化 履修資格検定試験模範解答
2020 Culture Today Qualification Test Model Answers
https://www.academia.edu/43582619/2020_Culture_Today_Qualification_Test_Model_Answers

Culture Today Proficiency Test Model Answers on Twitter
https://www.academia.edu/45669055/Culture_Today_Proficiency_Test_Model_Answers_on_Twitter

2020こんにちの文化 中間レポート模範答案
https://www.academia.edu/43582671/Culture_Today_Midterm_Report_1_Model_Answers

2020こんにちの文化 レポート提出資格検定試験模範解答
Culture Today Midterm Report Model Answers on Twitter
https://www.academia.edu/45669071/Culture_Today_Midterm_Report_Model_Answers_on_Twitter

2020「こんにちの文化」補完講義
Culture Today Supplementary Lectures on twitter https://www.academia.edu/45168002/Culture_Today_Supplementary_Lectures_on_twitter

2020「アニメ芸術論 Re:CREATORS」ツイッター講義
Anime Study ReCREATORS Twitter Lectures
https://www.academia.edu/45161312/Anime_Study_ReCREATORS_Twitter_Lectures

2020「ゲーム芸術論 Fate/stay night」ツィッター講義
Game Study Fate Stay Night Twitter Lectures
https://www.academia.edu/45149886/Game_Study_Fate_Stay_Night_Twitter_Lectures

英語b Peter and Wendy Reading Comprehension
English b Twitter Lectures Spring Semester
https://www.academia.edu/45188587/English_b_Twitter_Lectures_Spring_Semester

English b Twitter Lectures Autumn Semester
https://www.academia.edu/45317909/English_b_Twitter_Lectures_Autumn_Semester

English b Lecture Management: Viewing Comprehension and Creative Thinking
https://www.academia.edu/45551603/English_b_Lecture_Management_Viewing_Comprehension_and_Creative_Thinking

Movie Peter Pan and the Original Novel: 2次創作作品Peter Panと仮構的原型
https://www.academia.edu/45469305/Movie_Peter_Pan_and_the_Original_Novel_2次創作作品Peter_Panと仮構的原型

これらの講義は全て、お互いの関連講義として相互参照を行い、統括した講義主題を形成することが企図されています。今後続けて追加されていく他の講義においても、その趣旨は同様に保持されています。

「こんにちの文化」補完講義においては、Academia の以下の場でdiscussion の場が設けられています。
https://www.academia.edu/s/113cf933d8?source=link

意識と情報と仮構性に関する統合的考察が文化現象に対する理解においていかなる具体的な視軸を形成することができるか、これらを柔軟に反映した遠隔講義のあり方としていかなる工夫がありえるかについて、ご意見を頂けましたら幸いです。

15:22:15 | antifantasy2 | No comments | TrackBacks