Archive for 15 May 2005

15 May

The Last Unicorn 『最後のユニコーン』読解メモ 227


"My son, your ineptitude is so vast, your incompetence so profound, that I am certain you are inhabited by greater power than I have ever known. Unfortunately, it seems to be working backward at the moment, and even I can find no way to set it right. It must be that you are meant to find your own way to reach your power on time; but frankly, you should live so long as that will take you. Therefore I grant it that you shall not age from this day forth, but will travel the world round and round, eternally inefficient, until at last you come to yourself and know what you are. Don't thank me. I tremble at your doom."

「我が弟子よ。お前の無能さは、莫大なものだ。お前の無能さは、あまりにも深遠なものだ。お前には私のかつて知ることの無かった、より大きな力が宿っているに違い無い。不幸なことにその力は、今は反対の向きに働いているようだ。私でさえその力を正しく導いてやることはできない。お前は、自分自身でその力をつかみ取る道を探し出すしかないのであろう。けれども正直なところ、その時を待つためには、お前は随分と長生きしなければならないことだろう。だから私は、今この時から、お前が年をとることを止めるようにしてやろう。お前はこれから、世界中を永遠に無力なまま、旅し続けることになるのだ。最後の時がくれば、お前は備わっている筈の能力を手に入れることができるだろう。そして自分がどれほどのものであったかを知るであろう。私に感謝してはならない。私はお前に与えられた運命の恐ろしさに身が震える思いだ。」

 シュメンドリックの師であったNikosがシュメンドリックに不死の魔法をかけた際のことばである。 “I am older than I look.”とシュメンドリックが事ある毎に語っていたことの理由が説明されている。呪いを受けて、死を得ることが不可能になり、永遠に世界をさまよい続ける“Wandering Jew”(彷徨えるユダヤ人)のイメージの変奏となっている。尽きることのない円環性の呪縛、時間性の限界、永遠性の呪いとしてキーワード“eternal”と反転的に関連する。絶大な無能さが莫大な有能さを暗示するというのは、反転的対立要素の循環的連関として構築される、影の論理の世界解式ともなっている。

用語メモ
 ineptitude, incompetence, inefficient:どれもみな、“無能”、“無力”を示す言葉である。ineptitudeと incompetenceは名詞。inefficientは形容詞。


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作品研究サンプル
▼『不思議の国のアリス』とファンタシーの世界
・映画“ラビリンス”とアリス
・映画“ドリーム・チャイルド”とアリス

(論文、アンチ・ファンタシーというファンタシー(13)「荒唐無稽とアナクロニズムとペテン的記述―『最後のユニコーン』における時間性と関係性の解体と永遠性の希求」、『ピーターとウェンディ』注釈テキスト "Annotated Peter and Wendy"等を公開中)


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