Complete text -- "Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 42"

28 December

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 42


 Wendy gave the words, one, two, three, and Michael took his medicine, but Mr. Darling slipped his behind his back.
 There was a yell of rage from Michael, and "O father!" Wendy exclaimed.
 "What do you mean by "O father'?" Mr. Darling demanded. "Stop that row, Michael. I meant to take mine, but I -- I missed it."
 It was dreadful the way all the three were looking at him, just as if they did not admire him. "Look here, all of you," he said entreatingly, as soon as Nana had gone into the bathroom. "I have just thought of a splendid joke. I shall pour my medicine into Nana's bowl, and she will drink it, thinking it is milk!"
 It was the colour of milk; but the children did not have their father's sense of humour, and they looked at him reproachfully as he poured the medicine into Nana's bowl. "What fun!" he said doubtfully, and they did not dare expose him when Mrs. Darling and Nana returned.
 "Nana, good dog," he said, patting her, "I have put a little milk into your bowl, Nana."
 Nana wagged her tail, ran to the medicine, and began lapping it. Then she gave Mr. Darling such a look, not an angry look: she showed him the great red tear that makes us so sorry for noble dogs, and crept into her kennel.
 Mr. Darling was frightfully ashamed of himself, but he would not give in. In a horrid silence Mrs. Darling smelt the bowl. "O George," she said, "it's your medicine!"

 ウェンディが1、2、の3とかけ声を発すると、マイケルは自分のお薬を飲みました。でもダーリング氏は、自分のを背中の後ろに隠したのです。
 マイケルが怒りの声をあげました。そしてウェンディも「お父さんったら。」と叫んでしまいました。
 「『おとうさんったら。』とはどういうことかね?」ダーリング氏はきつい口調で尋ねました。「騒ぐのは止めなさい、マイケル。僕は自分のお薬を飲もうとしたんだが、…しくじってしまったんだ。」
 3人の子供達がお父さんに向けた眼差しは、ぞくりとするようなものでした。もうお父さんを尊敬することはできない、彼等の目は語っていました。「みんな、これを見てごらん。」ナナがお風呂に行ってしまうと、ダーリング氏は懇願するように言いました。「とても面白いジョークを思い付いたんだ。僕のお薬をナナのお皿に入れてやるんだ。ナナはミルクと間違えて、飲んでしまうだろうね。」
 お薬はミルクのような色でした。けれども子供達は、お父さんのようなユーモアのセンスは持ち合わせていませんでした。ですから、お父さんがナナのお皿にお薬を注ぐと、彼等は非難するような目で見ていました。「面白いぞ。」お父さんは少し自身なさそうに言いました。子供達もダーリング夫人とナナが戻ってきた時、敢えて告げ口しようとはしませんでした。
 「ナナ、いい子だね。」お父さんはナナの背中を叩きながら言いました。「君のお皿にミルクを入れてあげたよ。」
 ナナはしっぽを振り、お薬のお皿のところにとんで行きました。そしてなめ始めたのです。それからナナは、とても悲しそうな顔をしました。決して怒った顔ではありませんでした。気高い犬にひどいことをしてしまった、と後悔させるような、涙にうるんだ赤い目をしていたのです。ナナは犬小屋にもぐり込んでしまいました。
 ダーリング氏はどうしようもない程、自らを恥じる気持ちになりました。けれども過ちを認めようとはしませんでした。みんなが押し黙った中で、ダーリング夫人がお皿の臭いを嗅ぎました。「ジョージったら。あなたのお薬じゃないの。」お母さんは言いました。

 無思慮に行われてしまった卑怯な振る舞いと、そのために引き起こされた気まずい雰囲気が見事に描かれている。心の中にわだかまるしこりについては、このお話はどんなに現実的な小説よりもごまかしがない。

用語メモ
 row:“騒ぎ”、“口論”のこと。
 expose:“あばく”、“暴露する”の意。



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