Complete text -- "Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 104"

28 February

Peter and Wendy 『ピーターとウェンディ』読解メモ 104


 As time wore on did she think much about the beloved parents she had left behind her? This is a difficult question, because it is quite impossible to say how time does wear on in the Neverland, where it is calculated by moons and suns, and there are ever so many more of them than on the mainland. But I am afraid that Wendy did not really worry about her father and mother; she was absolutely confident that they would always keep the window open for her to fly back by, and this gave her complete ease of mind. What did disturb her at times was that John remembered his parents vaguely only, as people he had once known, while Michael was quite willing to believe that she was really his mother. These things scared her a little, and nobly anxious to do her duty, she tried to fix the old life in their minds by setting them examination papers on it, as like as possible to the ones she used to do at school. The other boys thought this awfully interesting, and insisted on joining, and they made slates for themselves, and sat round the table, writing and thinking hard about the questions she had written on another slate and passed round. They were the most ordinary questions --
 "What was the colour of Mother's eyes? Which was taller, Father or Mother? Was Mother blonde or brunette? Answer all three questions if possible." "(A) Write an essay of not less than 40 words on How I spent my last Holidays, or The Caracters of Father and Mother compared. Only one of these to be attempted." Or "(1) Describe Mother's laugh; (2) Describe Father's laugh; (3) Describe Mother's Party Dress; (4) Describe the Kennel and its Inmate."

 時が経つにつれ、ウェンディは家に残して来た、愛する両親のことに思いを寄せたでしょうか?これはちょっと難しい問題です。何故ならネバーランドでは、時がどんな風に経つのやら、良く分からないからです。月や日で時は勘定されるものですが、ネバーランドではもとの世界よりもはるかに多くの月日があるからです。でも残念ながら、ウェンディはあまりお父さんやお母さんのことは考えなかったように思います。ウェンディは、両親が彼女が戻って来られるように、いつも窓を開けておいてくれることを、確信していました。だから心に不安を覚えることは全くなかったのです。時折彼女の心を乱したのは、ジョンの両親の記憶が曖昧で、過去の知り合いくらいとしか、考えていないことでした。マイケルはといえば、ウェンディが自分の本当のお母さんだと、もう心から信じようとしていました。これらのことが、ウェンディの気持ちを少し動揺させました。そしてウェンディは自分の義務として、以前学校でやっていたみたいに試験を行って、弟達の心の中に昔の生活を呼び戻そうと考えたのでした。他の子供達もこれがとても面白いことだと考えて、一緒に試験を受けることにしました。という訳で、子供達はみんな一人一人自分の石版をあつらえ、テーブルの周りに並んで座って、ウェンディが別の石版に書き込んで回した問題を解こうと一生懸命考え込みました。問題はといえば、ごく普通の試験問題でした。
 「お母さんの目の色は何色ですか?お父さんとお母さんと、どちらが背が高いですか?お母さんはブロンドですか、それともブリュネットですか?もし可能なら、これ全ての質問に答えなさい。」とか、「A:この前のお休みの時、どのように過ごしたか、あるいはお父さんとお母さんの生各の違いについて、40字以上で語りなさい。どちらか一方のみを答えなさい。」とか、「1:お母さんの笑い声はどんな感じですか?2:お父さんの笑い声はどんなですか?3:お母さんのパーティーのドレスはどんなふうですか?4:犬小屋とその居住者について語りなさい。」とかいうようなものでした。

 ネバーランドに関するもう一つの興味深い情報が語られている。現実の世界よりも月日の数が多く、記憶の密度が高い世界がこの夢想の中の島なのである。確かに現実世界には、関心の対象となるもの以外の夾雑物があまりにも多過ぎる。本来のあるべき姿からの不幸な逸脱を疑わざるを得ない、誤りと不完全さが目に付くことが、現実の特徴の一つである。

用語メモ
 slate:昔ノート代わりに用いていた石版。
 caracter:“character”の間違い。ウェンディが書き損じた通りを記したもの。
 describe:試験の問題に良く用いる言葉。“書きなさい”、“説明しなさい”。“語りなさい”等に訳すことができる。




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 作品講読「ピーターとウェンディ」(Peter and Wendy)を読む
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◆内容
 “ピーター・パン”の物語として有名な、『ピーターとウェンディ』を原文で読みます。実はあまり良く知られていない原作の哲学的な主題を、英語表現の鑑賞に気を配りながら読みとって行きます。4回という限られた回数で作品の全体像を把握するために、読解上の注釈を施したテキストを用意しました。インターネットで公開中の対訳とメモを活用し、質疑応答を通して要点を押さえながら、読解の作業を進めていきたいと思います。
 主題としては、意識内世界としてのネバーランドという場所、個人の内面心理を形成する疑似人格的要素としてのピーターとフックという人物像等について考察することにより、“世界”と“自己”という概念に対する再検証のあり方を試みるつもりです。
 (インターネットの利用、コンピュータの操作等ができなくとも、受講には差し支えありません。)



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